日本画基礎Ⅱ(野外)1年次開講
『羊羹の夜』
雲肌麻紙、岩絵具、水干絵具、墨|H727 × W606mm
自然が多いキャンパスで伸び伸びと制作ができている
風景課題で自宅の近所の川を描きました。夜になる直前くらいの時間、空がとても青くなって街の明かりがつき始め、川がにわかに光る感じが、室生犀星の「夜の川は羊羹のように流れている」という言葉を想起させて、ずっと描きたいと思っていました。普段から大切にしている色の表現に今回もこだわりましたが、まだ画材に慣れておらず、思い通りにいかないことも多かったです。ただ、先生からは建物が連なる様子や空の表現、色の選び方も独特で面白いと言っていただきました。
制作は伸び伸びとできています。先生は基本的に「まずは自分でやってみなさい」というスタンスで、質問すればアドバイスをもらえるし、だからといって「こうしなさい」と言われるわけでもありません。自然が多くて動物もたくさんいる、のんびりしたキャンパスの雰囲気も大好きです。今後は高校時代から続けている絵本制作や版画にも取り組みたいし、協定留学制度を利用して海外で美術を学びたいと思っています。
(1年|シャダポー夢亜さん)
日本画基礎Ⅲ(人体)1年次開講
『焦り、悩む』
雲肌麻紙、岩絵具、水干絵具、墨|H720 × W910mm
初めて描いた人体デッサン。今では自分なりの成長も感じている
1年次後期に取り組んだ人体をテーマにした自由課題です。事前の授業でヌードデッサンなどを行って人体の骨格や構造を理解し、そこから生まれる魅力を自分なりに発見したうえで、自由なテーマで制作しました。何を描くべきか思い浮かばずギリギリまで焦り悩んでいた自分自身を描いたので、手や背景の描き込みが足りないと講評でも指摘されましたが、人物の切り取り方を評価してもらえたことは励みになりました。
美術予備校に通っていなかったので、人体デッサンは日本画学科に入って初めて経験しました。ちょうど今取り組んでいる課題も人体デッサンなのですが、友人たちの制作過程や完成作品を見たり、画材にある程度慣れてきたこともあって、画面構成の仕方や視点の持ち方について自分なりの成長も感じています。ムサビには美術に対する想いもさまざまな学生が集まっていて、話していると知らなかった技術や絵との向き合い方に触れることができます。とても学びが多い毎日です。
(2年|河野峻也さん)
絵画実習Ⅲ(風景)3年次開講
『路上園芸』
和紙、岩絵具、水干絵具、顔料|H1120 × W1620 × D30mm
テキスタイルの課題をきっかけに見つけられたテーマで描いた作品
基礎課程の頃は自分の中にある概念的な日本画に沿わないといけないと思いながら制作していましたが、2年次に受講した工芸制作Ⅰというテキスタイルの授業で、同じような色でも質感が異なる糸を使ってタペストリーをつくる課題をきっかけに、支持体となる紙の色を生かした絵を描くという自分なりのテーマを見つけることができました。植物のような静かなものを描くこと、そして紙の白さと絵の具の白さの対比を使った表現を模索する中で描いたのがこの作品です。ムサビ周辺の住宅街には観葉植物がよく置かれています。お手入れはされているけれど野ざらしというか、生花よりも自由に生きている姿に魅力を感じて、いろんな場所、いろんな時間の観葉植物が持つ個性を1枚の絵にしました。和紙を張ったパネルに細いシャープペンシルで直描きしたり、塗りの作業ではわざとゆるく筆をのせてみたりと、自分なりのプロセスや日本画という画材特有の偶然性が生み出す表現についても意識して描きました。
(3年|小河彩乃さん)
絵画実習Ⅷ4年次開講
『潮騒』
和紙、岩絵具、墨│H1030 × W728 × D28mm
技法や画材への理解を深めながら自由な表現に挑戦できる環境
4年次前期の自由課題で、50号の日本画を2枚描いたうちの1枚です。卒業制作を控えて挑戦したことのない表現に取り組んでみようと、自主的に描くことがなかった人物をモチーフに、海へ行った時に感じた海風や波の音が自分の身体を通り抜けていく感覚を描きました。涼やかさや透明感を出すために薄塗りにこだわったため、絵の具が乾かないうちに少しだけ拭き取ったり筆で画面を洗ったりする引き算の作業の連続で、和紙を傷めず余白を汚さないようにと神経を使ったことを覚えています。
日本画というと“徒弟制度”のイメージがあるかもしれませんが、ムサビの日本画学科には箔押しや焼き方の指導や筆の歴史、製造工程を学ぶ実習など特別講義が豊富に用意されていて、技法や画材への理解を深めることを大切にしながらも学生の自由な表現を尊重してくれます。アニメーションや染物に挑戦している同級生もいるし、造形総合科目で日本画以外の表現に触れられたことも視野を広げる貴重な機会になりました。
(4年|日下部亜留斗さん)