絵画基礎Ⅰ(銅版集中授業) 1年次開講
『散水栓』
銅版画|紙、油性インク|H540 × W396mm
銅版画の特性を深く知り、自分らしい作品に仕上げたかった
―どんな授業・課題でしたか?
1年次は4版種を順番に学んでいきます。銅版画を学ぶ授業では、エッチングとアクアチントという基本的な技法を学んだ上で、自由なテーマの課題に取り組みました。私は銅版画の特性を深く知ることと、自分らしい作品に仕上げることを目標に、よく描いている風景をモチーフにしました。情報量が少ない中で絵力を強くするためには構図が大切になるため、見せたいところがストレートに伝わるように画面のコントラスト比を意識し、散水栓のスケール感や、日向、日陰の表情の違いの表現に力を入れました。
―今後の目標は?
芸術であり、メディアでもある版画の学びを生かして、将来は本をつくる仕事に携わりたいと思っています。今もイラストの同人誌を自主制作しているので、デザインから装幀まですべて手づくりできる絵本やブックアートの授業が始まるのが待ち遠しいです。1枚の紙が束になることで本になるという魅力を突き詰めてみたいです。
(1年|堂本陽さん)
版画実習Ⅳ 3年次開講
『錦に燃ゆる』
デジタルイラストレーション
構図や遠近感の表現を利用して、平面のデジタル表現に充実感を出す
―どんな授業・課題でしたか?
油絵専攻との合同コンクールで、学生がそれぞれの手法で自由なテーマの制作に取り組みます。私は「和風×不思議の国のアリス」をテーマに、赤の女王の治める国から着想を得て、国全体が紅葉と夕焼けに彩られた風景をデジタルで描きました。力を入れたところは、奥行きのある画面に仕上げることです。絵具の重なりやインクの濃さが物理的に出てくるアナログな表現と違い、デジタルは平面ですから、構図や遠近感の表現をうまく利用して画面に充実感を出しました。ゴールを決めてから作業することが多い版表現と違い、自由度は高いものの、描き込みの終わりどころを見つけるのも難しかったです。
―今後の目標は?
展示方法を研究したほうがいいと先生から指摘された通り、さまざまな展示方法に挑戦してみたいと思っています。版画からグラフィックアーツ専攻に変わり、新しい工房ができたりデジタル系の授業も増えると聞いているので、楽しみです。
(3年|國﨑葵さん)
版画実習Ⅴ 3年次開講
『エヴィバディ鷹の台』
木版画|和紙|H800 × W590mm
彫りと刷りを繰り返す彫り進み版画で描いた作品
―制作した作品について教えてください。
普段から身近にある風景やモノ、生き物をテーマに描いていて、多くのムサビ生にとって身近な鷹の台駅前を彫り進み木版画で描きました。色の重ね方によって複数の版を刷る普通の木版画と違い、彫り進み版画は1枚の版を彫って刷り、さらに彫って刷りという作業を繰り返します。細かいかたちや立体感が出しやすく、上の版と下の版の色をピタッと重ねやすいと個人的に感じているので、この技法で制作しました。もっと練ったほうがよかったのではないかと先生から指摘された構図は今後の改善点です。
―ムサビの学びの環境は?
空気感が自分には合っています。特にグラフィックアーツ専攻は人数が少ないので、先生も学生もアットホームな雰囲気で、ストレスを感じることなく制作ができています。版画にとらわれず、何でもやってみたらいいよと言ってもらえるので、何事も挑戦しやすい。今後は立体と版画を組み合わせた作品にも取り組んでいきたいです。
(3年|斎藤翼さん)
版画実習Ⅷ 4年次開講
『カケラ』
銅版画、リソグラフ|紙、糸、石膏、他|約H30 × W30mm(豆本)、H297 × W210mm(ZINE)
豆本とZINEで記憶のカケラを記録する
―制作した作品について教えてください。
学生が主体となり、先生や研究室のスタッフにも参加してもらって版画集を制作する授業で提出した作品です。銅版画の豆本は、数え切れないほどの小さな叙事で構成されている記憶のカケラを記録することがテーマです。3年生の頃から毎日、大学の工房で刷っていて、200個ほどになりました。ZINEは訪問教授として来日していたドイツのクリストフ・ルックへバーレ先生による、リソグラフのワークショップをきっかけにつくったもの。彩色の作品の経験はほとんどなかったのですが、意外と良い効果が出たし、豆本と違ってエディション刷りも多くできる印刷の魅力を感じています。
―今後の目標は?
ムサビに来なかったらアートブックという表現も知らないままだったかもしれません。今後も豆本とZINEの制作を続けて、自分の世界観を伝えられるように努力したいです。大学院に進学する予定で、修了後は版画の工房をつくりたいと思っています。
(4年|チョウ ウリンさん)