教育研究上の目的

基礎デザイン学科は、社会形成・環境形成に関するあらゆる活動を対象とする領域横断性を標榜するデザイン学科である。変化する社会や世界を見すえ、既存の領域や方法にとらわれない、やわらかく創造的な頭脳と知性の育成を目指しており、デザイン諸問題を、先端的な造形と科学の双方、かつ学際的な思考の基盤から把握し、構想へと導ける人材の育成を目標としている。

学科理念・教育目標

現代は IT 技術を基盤とした情報サービスの高度化と、AI によるビッグデータの解析と運用によって社会のかたちが大きく変容しようとしています。又、気候変動を抑制するために、エネルギーインフラも重要な曲り角を迎えています。国内においては超高齢化社会と地域の過疎が問題となる一方で、遊動の時代を迎えてインバウンドの増加にともなう新たな産業のかたちが模索されはじめています。つまり、人間社会のしくみや産業や生活のあり方、そして自然や環境との接し方に関して、劇的な変革が起っているのです。

それにともなって、デザイン領域の果たすべき役割もまた極めて多様となり求められる職能の姿も変化しています。とりわけ戦後、工業を核として経済発展を遂げてきた社会は、急速な変化を強いられ、自ずと新たな視点にたつ産業分野の創出と、その根本をなす生活環境を見つめなおすべき時代を迎えています。

このような激動する今日の環境にあって、絶えずデザインの思想と方向性を捉え直しながら、人間生活にとってあるべきデザインの課題を発見し、そこに新たな解決を次々と生み出していくためには、世界や社会の諸問題を総合的に捉えうる包括的かつ自省的なデザイン教育が不可欠であるといえます。

本学科はデザインを俯瞰・総合する視点をもって昭和 42(1967)年の発足以来、様々な改革を重ねながら今日に至っていますが、現代の社会変革のなかで、デザインの脱領域的な基礎研究というテーマと実践行為を教育目標とする〈基礎デザイン学〉の意味は今日ますます重要となっています。

〈基礎デザイン学〉の意味

〈基礎デザイン学〉の「基礎」とは、デザインの専門教育の前段階としての基礎訓練を意味するものではなく、社会の環境に即して柔軟に問題を捉え直していくための新しいデザイン概念を意図しています。ゆえに〈基礎デザイン学〉は、社会に相即しながら、デザインの各専門領域、あるいは広義の造形一般に通底する新たな問題の水脈を絶えず堀り起こしていくデザインの創造的な教育・研究領野であります。

〈基礎デザイン学〉の「基礎」という意味の第二の観点は、さまざまなデザイン行為の基底を横断するデザインの原初的な意味を「コミュニケーション」として捉えていることです。「デザイン」という概念は近代に成立しましたが、デザインという行為そのものは人類の発生とともにあり、ここではデザインを人と人、人と物、人と環境との原初的な「交わり」や「対話」や「関わり」の問題、すなわち「コミュニケーション」の観点から捉え直しています。デザインが広く「造形言語」の問題であるという認識はもとより、自然言語とのかかわりへも視線が拡張され、また現代の人とテクノロジーとの界面を考える新しいインターフェイスのデザインという新たな課題も問われているのです。

〈基礎デザイン学〉はデザインの現場を広く社会的、文化的、心理的な文脈に求め、デザイン問題群のインターディシプリナリィー(学際的)な基礎づけやグランド・デザイン(全領域にまたがる基盤形成)の追求を学科の理念、教育・研究の目標としています。

3つのポリシー

造形学部のカリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)、アドミッション・ポリシー(入学者受け入れの方針)、ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)は、以下のページをご覧ください。