形態論Ⅰ 1年次開講

(1)第一段階のビットマップ書体

(2)制作途中の変形ルールと書体

(3)最終形の変形ルールと書体

できるだけ多くのルールを試し刺激的なかたちの書体を探った

入学して最初に取り組むタイポグラフィの課題で、はじめに方眼という自由度の少ない条件で大文字・小文字のアルファベットと数字をつくり、その後、方眼のかたち(ルール)を変更して先に設計した書体に適用することで、予期せぬかたちを自らの手でつくる体験をするという演習でした。ダイナミックな対比が生まれるように、第一段階であるビットマップ文字の設計では精密なローマン体をベースに完成度にこだわり(1)、第二段階ではできるだけ多くのルールを試しながら刺激的なかたちを探っていきました。
Illustratorのフィルターを試しに使ってみたものの(2)、自分の手でルールを設計してみようと先生からアドバイスいただき、試行錯誤して出てきたのが方眼の大きさや並び順を変化させるアイデア(3)。妙な立体感やノイジーな印象が出るように、方眼の配置をわずかに非対称にしましたが、結果を見ながら手を加え過ぎするのも面白くないという葛藤もあり、そのさじ加減が難しかったです。
(1年|畔上陽一さん)

色彩論Ⅱ 2年次開講

『かたちを持つ色』

H300 × W200 × D150mm|嵯峨十萌 共作

動きがあることで生まれる色彩の美しさや不思議さを表現した

色や色彩の現象性について理解を深める基礎課程の必修科目です。1年次は太陽の残像を観察して再構成する課題や、加法混色と減法混色の原理をもとに自分が生まれた地域の色彩を構成する課題などを通して色の基礎知識を学びました。制作が平面に限定されていた1年次と違い、2年次は3次元や時間を取り入れて色彩の可能性を開拓するグループワークが主になります。「動きと色」の関係を探る課題では、オイルタイマーをモチーフに、異なる色同士がすれ違ったり、色の粒の大きさが変化したりすることで生まれる色彩の美しさや不思議さを表現したいと思いました。さまざまな色の組み合わせを試し、色の粒が落ちる理想的な速度を探るために微調整を繰り返すなど、楽しく試行錯誤できました。私たちのように動きと色の美しさをテーマにするグループもいれば、情報を色で伝達する表現に挑戦するグループもいて、新たな視点で身の回りのものを見られるようになった、発見の多い授業でした。
(2年|根本純怜さん)

形態論Ⅱ 2年次開講

第一課題『隙間を包む』

石塑粘土(ラドール)|H100 × W120 × D120mm

第二課題『dobin』

石塑粘土(ラドール)|H200 × W180 × D120mm

細部にこだわり美しく仕上げる大切さを、改めて意識した瞬間

形態論は1・2年次の必修科目で、ディスカッションや制作を通してかたちへの理解を深める基礎デの中核を成す演習だと思います。私が2年生の時に取り組んだテーマは「空気のカタチ」。コロナ禍で身近になったマスクが無造作に使い捨てられているところから感じた、モノとしての柔らかさや隙間に存在する空気を表現しました。
マスクそのものではなくマスクの空気を表現できるように、軽さを感じる要素の抽出や、素材となる粘土とのギャップが生まれるような造形にこだわり、講評では“らしさ”をよく捉えていると評価いただけた一方で、ヤスリがけした端の部分が実物より薄くなっていることへの違和感も指摘されました。立体でも平面でも細かいところまでこだわり、美しく仕上げていく大切さを改めて意識した瞬間でした。3年生になった今も「課題と思わず作品をつくると思って取り組め」とよく言われます。その言葉通りひとつひとつの作業の精度を高めて、質の高い作品づくりに挑戦してきたいです。
(3年|山科友佳莉さん)

タイポグラフィ研究a 2年次開講

「作品を展開しよう」という先生の助言をきっかけに、課題終了後もシリーズを継続中

『negusegon』

マット紙、インクジェットプリント、クレヨン│H1030 × W637mm

コンプレックスも前向きに捉えて自分も周りも楽しませていきたい

グリッドシステムを用いた文字組みや空間構成を学ぶ2年次前期の演習で、身体の図版やイニシャル、詩を使って「自分を表す大怪獣」を表現する課題で制作したポスターです。怪獣と聞くと恐いイメージがあり、はじめは自分のネガティブな部分をテーマに試作していましたが、どうしてもうまくいかず、毎朝の悩みだった“寝癖”を面白おかしく表現してみようと軌道修正して生まれたのが寝癖怪獣「negusegon」でした。先生にアドバイスいただきながら、自分の頭皮の写真を中心に、寝癖を強調できる文字組みにもこだわって、朝のイメージカラーで全体を統一しました。
今、課題を振り返って感じるのは、技術を身につけるだけでなく、自分では思いもよらない条件の課題と向き合う中で、新たなアイデンティティを見いだせる時間だったということ。コンプレックスもポジティブに捉えられれば自分もつくっていて楽しいし、周りにも楽しんでもらえる。そんなユーモアのある作品をつくり続けていこうと決心できた一作です。
(4年|横井かおりさん)