西山仁展「天空」

西山仁 一問一答

五感に訴える空間づくりで、新たな感覚を開く作家西山仁の神奈川県藤沢市にあるアトリエをαMプロジェクト学生スタッフが訪ねました。アトリエは、駅前の喧騒を抜け、猟師町独特の路地を歩くこと数分の所にあり、元倉庫を自ら改修した家屋の入口にはロング・ボード、天井にはお気に入りのサーフボードが掛けられていました。今回のインタビューでは、過去の作品、自然や愛する海について、制作に対する思いなどをうかがいました。

2002.9.16、藤沢・西山仁アトリエにて
インタビュアー;越村直子、坂戸育美、佐藤真理、光井彩乃(武蔵野美術大学芸術文化学科)


質問
Q1 武蔵野美術大学の建築学科を卒業されていますが、そもそも、建築に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
Q2 卒業後は、建築家になろう、とは思わなかったんですか?
Q3 美術に興味を持ったのは、いつごろですか?
Q4 その課題では、具体的には何を選んだんですか?
Q5 曽根裕さんのアシスタントを長い間されているそうですが、どのようなきっかけで出会われたのでしょうか?
Q6 西山さんはそのときすでに、美術作家として活動をされていたのですか?
Q7 いつごろから、美術作家として活動しようと思われたのでしょうか?
Q8 現在、内装デザイナーも兼業されているそうですが、さまざまな仕事をやっている中で、一番楽しいときは、どういうときですか?
Q9 やはり、いずれは制作活動一本にしたいのでしょうか?
Q10 作品《ランドスケープ・ファニチャー》を発想したきっかけは何ですか?
Q11 作品《携帯用椰子の木》は、どうして携帯用なのですか?
Q12 観葉植物のようなノリなんでしょうか?
Q13 作品《グリーンルーム》を発想したきっかけは何ですか?
Q14 なぜ《グリーンルーム》というのですか?
Q15 尊敬する美術作家はいますか?
Q16 今回の「天空」展では、「雲」の「海」を制作されるそうですが、構想を聞かせてください。
Q17 波や空といった、自然のものをモチーフにすることが多いようですが。
Q18 西山さんにとっての自然とは何ですか?
Q19 そのような自然の表現を目指して、作品をつくっているのですか?



Q1 武蔵野美術大学の建築学科を卒業されていますが、そもそも、建築に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

もともと理系だった。とすると大学の学部は、工業系なのか、機械系なのか、で分かれる。その中の選択枠の中に建築があって、そのころ美大を志望する友人がいて、美大にも建築学科があるということを知って、それはおもしろそうだな、と。


Q2 卒業後は、建築家になろう、とは思わなかったんですか?

思わなかったね。建築科の4年間の勉強だけで、これで建築家になるなんて、ちょっと信じられないな、もっと勉強しなきゃダメだろうし、と思って。そのときすでに、美術にも興味があったし、もっといろいろ考える時間が欲しいというのもあって。卒業したらバイトでもして、どこか旅したい、と思ってた。結局そんなにしなかったけど。


Q3 美術に興味を持ったのは、いつごろですか?

子供の頃から、美術の授業は好きだったけど、建築学科の授業で、「自分の選んだ作品3つを所蔵品にした美術館を設計しなさい」という課題が出て、美術作品を調べ始めたら、おもしろいな、と。



Q4 その課題では、具体的には何を選んだんですか?

デュシャンと、ポロックと、未来派のジャコモ・バッラ。もとから何かで見たことはあったかもしれないけど、そんなに(美術のことを)詳しくは知らなかったから、課題のためにいろいろ調べて、いいと思ったものを選んだ。


Q5 曽根裕さんのアシスタントを長い間されているそうですが、どのようなきっかけで出会われたのでしょうか?

大学に通っているときからバイトに行っていた建築事務所に、曽根さんがよく遊びに来ていたんだよね。それで前から知り合いで、あるとき、「スタッフを探しているんだけどやらない?」と話をもらって、仕事を手伝うことになった。もう手伝って10年近いかな。




Q6 西山さんはそのときすでに、美術作家として活動をされていたのですか?

いや。建築事務所で図面を引いたり、模型を作ったりしてた。
もともと美術の方をやってみたい気持ちはあって、自分1人でやっていなくても、手伝うのも、それだけでもおもしろいだろうし、いきなり(自分1人で)やるよりも、いろいろなことが分かるだろうし、やってみようと思って。


Q7 いつごろから、美術作家として活動しようと思われたのでしょうか?

ここ5年くらい。
自然と、そろそろ自分でもやってみよう、と。そろそろなんとかしなきゃ、っていうのもあったかもな。このままふらふらしているわけにもいかない、と。


Q8 現在、内装デザイナーも兼業されているそうですが、さまざまな仕事をやっている中で、一番楽しいときは、どういうときですか?

一番、というのは難しいかな。雇われてする仕事でも、「ここからここまで自分で考えてやっていい」とか、自分で任された部分をやるときとか、完全に自分の好きにやれているときだね。


Q9 やはり、いずれは制作活動一本にしたいのでしょうか?

あまり、建築とアートを違うものとして考えていないし、内装の仕事も作品をつくるのもなにか、自分でものをつくっている、ということで、ひとまとめにして考えてる。




Q10 作品《ランドスケープ・ファニチャー》を発想したきっかけは何ですか?

地形について、何かできたらおもしろいな、と考えていた。
例えば自分が巨人になったとしよう!近くにあるグランド・キャニオンに座ってみたら、おさまりのいい場所があるかもしれない。そういうものをつくれたら、おもしろいかな、と。それが発想の原点なのかどうか。作品ができてから考えたのかもしれない。
作品をつくるときは、つくってみたいものをそのままつくっちゃう。コンセプトなんて、つくってみたい、と思った最初からは、あるわけがない。だからたぶん、つくった後に考えたんだと思う。


Q11 作品《携帯用椰子の木》は、どうして携帯用なのですか?

あれは模型。改めて、本当の大きさで作りたい。 ココナッツの実がなる椰子の木なんて、南の国に行かないと無い。日本じゃ、見れないじゃない。


Q12 観葉植物のようなノリなんでしょうか?

観葉植物でもありますが、まあリゾートの象徴だよね。それが常に自分がいるところにあって欲しい。そのへんから携帯用なんだよね。


Q13 作品《グリーンルーム》を発想したきっかけは何ですか?

波に乗ることを疑似体験したい、という思いももちろんあるけど、波自体がおもしろいから。ビーチから見ているだけでも、波って、どうしてこんなに変な形をしているんだろうって。なにもない普通の、平らな水面のはずなんだけど。大きいのが来たりして。
それに、ずっと海にいると、本当にきれいだから。でも、一瞬でしかありえないものだから。それをずっと見れるものであったら、いいものになるだろうな、と。




Q14 なぜ《グリーンルーム》というのですか?

波にできたチューブの空間の部分を、《グリーンルーム》と呼ぶんだな。



Q15 尊敬する美術作家はいますか?

身近な人だと曽根裕だね。あとはフィッシュリ&ヴァイスとか、ハンス・ハーケとか。 やっぱり最近の人のほうが、身近な存在というか、まだ生きているし、死んでしまった人は当然のように尊敬はできるけれど、これから新しく作品をつくるわけではないし、研究の範囲にとどめられるというか。


Q16 今回の「天空」展では、「雲」の「海」を制作されるそうですが、構想を聞かせてください。

僕のなかでは、雲というものは波に近い存在だと思っているんだよね。両方とも風でできている造形物で、常に形を変える、触るに触れないもので、両方、水でできている。そういうところから、イメージが重なるんだ、と思ってる。
朝日とか、夕日とかは、色の変化がきれいで、そういう変化のなかで、海に入る。朝に海に行くと、見えるものが雲と海だけなんだよね。だから、僕のなかではすごく、つながりが深い。


Q17 波や空といった、自然のものをモチーフにすることが多いようですが。

常に変化し続けるものが好き、だね。
風が好きなんだと思います。風が、雲や波をつくっているんだから。


Q18 西山さんにとっての自然とは何ですか?

自然とは何か、というと複雑になってくるけど。本当に自然というものはあるのかな、という気もするし。まあ無理な力が入ってなくて、楽な感じだけど、危険も含んでいたりするもの。



Q19 そのような自然の表現を目指して、作品をつくっているのですか?

目指しているわけじゃない。でも、普段からそういうことを考えていて、意識はあるから、作品をつくるときに、(そういう意識が)出てくるんじゃないかな。無理に目指そうとしていると、それは自然ではなくなる。目指すのではなく、無意識の意識に持っていけるような状態にできたら、自然と、出てくるものじゃないかな。「自然とは何か?」というと、曖昧になるけれども、力んでいたらダメだと思う。力んでいたら、波に乗れないのと同じで。

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