学科理念・教育目標

Sculpture(彫刻の表現)は他の芸術と比較して、未知の世界をこの現実の世界に出現させることができる領域です。この表現は「触覚」という人間の根源的な感覚をベースに持つ、極めて原初的なものでありながら、人間の歴史とともに生み出してきた様々な素材や技術と結びついて独自な表現領域をつくり出してきました。別の言い方をすれば「ものを存在させる表現」と言う事ができるでしょう。誤解されがちですが、表現における「触覚」とは単に皮膚で触れる感覚を言うのではありません。むしろ触れないで感じる事。外側から見るのではなく、総ての感覚を密接に関連させてものの「内側」からあらゆる点において知覚することを意味します。そのような表現を基礎とする彫刻は、新しいリアリティを見つける身体的な思考であるとともに、世界と関わる具体的な技術であると言えましょう。

そしてそれは良く知られた彫刻の領域ばかりでなく、まったく新たな芸術領域の創造の可能性をも示唆しています。彫刻の歴史はその概念を押し広げ、様々な表現の拡がりをつくり出してきました。私たちの学科はその中で、同時代の美術とは何かを問い続けることと、素材と対峙しながら美術の歴史を見つめ直すことを行き来しながら制作の環境を作ろうとしています。その環境こそがカリキュラムの基本として位置づけられるものでしょう。

彫刻学科は工房を駆使し、経験から理論を積みあげてゆく方向性を持つ学科です。他に類を見ない設備とスペースを持つ個性的な工房を制作の背景として、表現についての思考力を深め理論的にステップアップしてゆくカリキュラムと、工房での専門的な指導が交差する教育環境を核として、4年間を通して自立して制作研究のできる表現者の育成に取り組んでいます。表現者としての自覚をいかに持つかを考えてゆくことは、将来作家活動へ必ずしも向かわなくても、美術と関わる長期的な視点を持ち、社会性を獲得する上で決して無駄なことではないでしょう。

カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)

触覚の持つ知覚の根源性と表現の多様性を根本に置き、ひらかれた環境の中での専門性の追求を目指します。1〜2年の基礎過程では素材と対峙することで得られる身体的な思考を培い、基本的な表現技術と課題の設定力、素材と表現を起点とした多様な美術の歴史的な視点を学習します。3年以降は各テーマに従っての制作を行い、同時代そして過去の作品を見る力を養います。学生の制作環境をひとつの教室やコースに留まらず、目的により選択出来 多方面から批評を受けられる体制をとります。

アドミッション・ポリシー(入学者受け入れの方針)

物質や空間と対峙する事によって得られる身体的な造形思考を培い、それを基盤とした多様な創造・研究活動を、社会との関わりの中で発信して行く事の出来る専門家を育成します。基礎的な造形力を有し、表現の同時代性に重点を置いた指導の下で、自由で多様な手段で探求しカリキュラムに沿ったプログラムと制作環境の下に 創造・研究を展開することのできる学生を募ります。

  • 彫刻の表現を追求し専門性を深めようとする人。
  • 独自の表現領域を探求しようとする人。
  • 創作・研究活動を通して世界的な視野を持とうとする人。

ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)

彫刻を基盤とした美術に関わる専門家の育成という目的において、学科における最終的な研鑽成果を問うために、卒業制作(公開展示)として次の事項について研究室教員全員で総合的に判断し評価します。

  • 総合的に差異が追求され、独自な表現として深化させる力があるか。
  • 表現に則した技術を深め、習得できているか。
  • 主体的に課題を設定し、創作する力を身につけているか。
  • 歴史性と社会との関わりを認識し、発信する視座を身につけているか。