7つの専門工房を駆使しながら独自の表現領域を探求する。

造形的な基礎と自分自身の視点を探ること。彫刻学科はこの二つを表現の基礎と考えています。1・2年次の基礎課程では、さまざまな素材と向き合うことで得られる身体的な思考を培いながら、表現技術と課題の設定力を鍛えるとともに、多様な歴史観を学びます。

3年次以降の専門課程では、緻密にレイアウトされた7種類の工房をベースに制作します。一つの教室やコースに留まることなく、目的により制作環境を選択でき、多方面から批評を受けられる環境です。また、同時代的な表現の視座を探る講義演習系の授業も並行して行い、主体的に課題を設定できる力も養います。

カリキュラム

全体

触覚の持つ知覚の根源性と表現の多様性を根本に置き、ひらかれた環境の中での専門性の追求を目指します。1〜2年の基礎過程では素材と対峙することで得られる身体的な思考を培い、基本的な表現技術と課題の設定力、素材と表現を起点とした多様な美術の歴史的な視点を学習します。3年以降は各テーマに従って制作を行い、同時代そして過去の作品を見る力を養います。学生は、制作環境をひとつの教室やコースに留める必要はありません。目的によって環境を選択することが可能であり、多方面の視点から作品の批評を受けることのできる体制をとります。

基礎課程(1~2年次)

彫刻の表現は、私たちがよく知っているもの(物質や現実や技術など)を見つめ直すところから始まります。しかしこの領域は非常に幅広く、そこには素材に対する感じ方や、「もの」「現実」に対する考え方の違いがあります。しかし私たちはその違いを超えて感動したり、それを通して世界を広げたりすることができる。それらを可能にするための実習がこの基礎課程です。〈「よく知っているもの」を疑うための様々な方法〉これを私たちは表現の「基礎」と考えています。この「基礎」を巡る問題に対して一人一人が実習を通して様々なアプローチで身につける、というのがこの課程の目標です。「つくること」「みること」「かんがえること」をひとつの表現の中で捉える、それぞれの方法の探求が始まります。

1年次

触覚についての理解を深め、正確な立体造形力、差異を意識した制作展開、触覚を基底とした立体的なイマジネーションを身につけ、多様な表現方法を通じて、彫刻概念の基礎を自分自身の視点で習得します。

2年次

全て選択制のカリキュラムで、各自が目的に従ってカリキュラムを組みます。前半を塑造実習、後半を実材実習として、少人数制の集中的な指導により表現技術を習得し、素材の歴史性と独自性を考える実習となっています。

専門課程(3~4年次)

彫刻学科のカリキュラムは、3年次からは自由課題としてそれぞれの専門性を追求してゆく場が用意されています。概略に示した通り、私たちの学科は彫刻の概念を、広い範囲で同時代の表現として捉えています。つまり「これが彫刻だ」と教えるのではなく、彫刻に対する疑問や様々な彫刻についての思考が交差する環境が、3 年次以降の制作の場となります。自由課題とは、課題そのものの設定や作品制作に至るプロセスについて、実習を通して自由に考えてゆく段階です。「独自性の追求(originality)」「専門的な探求と習作(study)」「素材や表現の実験(exercise)」など、各自が焦点を絞った表現の探求を行います。また作品に対する批評も造形的な観点に加えて、歴史的な観点、同時代的な観点、社会的な観点など、多方面からのアプローチにより、学年に伴いステップアップしてゆくカリキュラムとなります。また、3年次からは、より自由な制作を進めるために専門工房を駆使した制作が始まります。彫刻学科には様々な素材を研究する7種類の工房が設けられていますが、学生は計画的にそれらの工房を選択しそこをベースに制作してゆきます。それぞれの教員が工房において深く関わると同時に、その枠組みを超えて、工房を「横断」出来ることも大きな特徴です。専門性に対して新しい解釈を生み、深く一つの領域・素材を追求することも、横断することを通じて独自のジャンルを構築してゆくことも可能なシステムとなっています。自身の視点を探求し発信してゆくステップアップ型のカリキュラムを縦糸とするならば、横糸に相当するのが素材別工房による指導です。

3年次

多様な専門工房を駆使した制作を行い、素材に対する各自の固有の関わりを探求します。主体的に課題の設定を行えることを目標とし、同時代の表現についての視座を探る講義演習系の授業も平行して行われます。前半はイメージの実現化を目指し、後半は自己の制作を分析し展開する可能性を探り、表現力を深めてゆく実習になります。

4年次

素材に対する各自の専門性を深め、これまで培ってきた表現力の展開を、客観的な視点と社会に発信していく方法を通して追求します。その過程で、表現の責任と独自性、作品が成立する地平と歴史への意識を様々な方面から問い、批評を加えていく指導を行います。