基礎造形(表現基礎Ⅰ)1年次開講

段ボール|H930 × W1800 × D500mm、H800 × W1350 × D500mm

私たち学生の彫刻への考えを示す1年次最初の課題

―どんな授業・課題でしたか?
女性モデルの動きを段ボールで表現する課題です。彫刻学科に入って最初の授業なので、私たち学生の彫刻への考えを作品として示す、自己紹介的な課題だったと思います。

―制作した作品について教えてください。
人が人たらしめている所以に興味があり、人が立つとはどういうことなのかを特に注意して考えながら制作しました。段ボールを立たせるための支えがあると作品の邪魔になると思っていたのですが、支えなしで自立させることが難しく行き詰まっていたところ、「取捨選択をして最終的に残ったものなら、その表現に必要なのでは?」とアドバイスをもらえたことが、突破口になりました。やりたくないことに気を取られ、結果的に作品の可能性を狭めていたと気付けたし、講評では展示段階で意識するべきことも明確にできました。今はムサビの特色である共通絵画を受講しているところです。他学科のものの見方や考え方が学べて、とても新鮮です。
(1年|本多由希美さん)

彫刻D・E(塑像実習Ⅰ・Ⅱ) 2年次開講

『傷と跡』

FRP、テラコッタ|H250 × W440 × D500mm(FRP)、H420 × W240 × D400mm(テラコッタ)

予想外の結果をどう受け止めるのかも制作の一部

―どんな授業・課題でしたか?
テラコッタとFRPによる作品制作の工程を体験する実習です。マンガから好きなコマを切り抜いて気になるかたちを拡大コピーし、それをもとに水粘土で原型をつくり、石膏で型取りをして、テラコッタとFRPで成形しました。

―制作した作品について教えてください。かたちについて執着しないように言われていたので、無意識から生まれるかたちを受け入れる姿勢で原型をつくりましたが、各素材で成形するときは、素材の特性や制作工程の違いから感じたことを引き出せるように集中しました。触覚的な生々しさが伝わるように、FRPでは穴や表面の汚れをそのまま残して、さらに表面に傷を付けた一方、テラコッタではヒビ割れをかさぶたのイメージで埋めました。成形時のムラや欠けなど予想外の結果をどう受け止めるかも制作の一部なのだと学ぶことができたと思います。今後は気になっているセラミックを素材に、好きな絵や色使いを織り交ぜた作品をつくれるよう頑張ってみたいです。
(2年|原田紗綾さん)

彫刻H(プランニング/エクササイズ)3年次開講

スチレンボード、紙、PPシート、木材、写真、他|サイズ可変

ものや社会との関わりからも作品のテーマは生まれてくる

―どんな授業・課題でしたか?
3年次から制作のテーマが自由になるため、その準備段階として、どうすればつくりたいものをかたちにしていけるのかを考える授業です。

―制作した作品について教えてください。
テーマがまったく異なる2つの作品を提出しました。1つ目は、かたちや存在がただ在るということに向き合いたくて、80kgほどの本小松石をかたちの流れに沿って彫り進め、写真に撮ったもの。もう1つは、自動販売機のように厚みや質量があるものに抱く「本当にこれだけの量感って必要なのかな?」という興味をマケットで表現したものです。特に後者では、それで何を知りたいのかが自分でもわかっておらず、講評で多くの分析や提案を先生からいただけたことが、今の制作につながっています。入学前は自分の内側から出てくるものが美術だと思っていたけれど、ものや社会との関わりを意識するようになりました。ムサビの彫刻が、学生がやりたいことを重視してくれる環境だからだと思います。
(3年|齊藤美帆さん)

彫刻M(逸脱)4年次開講

『装う』

発泡スチロール、樹脂、布、アクリルガッシュ|H1520 × W500 × D250mm

好きなものより苦手なもののほうが追求できるかもしれない

―どんな授業・課題でしたか?
「逸脱」をテーマに制作し、4年生全員で展覧会を企画する授業です。

―制作した作品について教えてください。
入学後は何をつくればいいのかずっと迷走していました。何か1つ突き抜けたことをやりたくて、自分が好きなものより苦手なもののほうが追求できるのではと思い、小さい頃から恐怖症レベルで嫌いだった着ぐるみをテーマにしました。発泡スチロールで男性の人体を彫刻し、布をかぶせてFRPで固めています。ありえないところにたるみが生まれたり、本来のキャラクターと中の人の性別や体型も異なったりする着ぐるみの気持ち悪さを徹底して表現したかったし、心のどこかではちゃんと彫刻をつくりたいという気持ちもあったので、布でディテールが見えなくなるとしても、人体をつくり込むことを意識しました。「これは彫刻と言えるのか?」「彫刻から離れている感じが良い」とさまざまな意見が出ましたが、私はこのスタイルを崩さずに、卒業制作につなげていきたいと思っています。
(4年|水野光乃さん)