基礎造形(表現基礎Ⅰ)1年次開講

段ボール|H1000 × W700 × D800mm

どんな工夫をすれば人間の生々しさを表現できるか

動く女性モデルをモチーフに、静止した作品の中でその動きを表現する1年次最初の課題です。素材は段ボール、サイズは等身大以上という条件でした。私は人間らしい自然な仕草から感じられる生々しさを捉えたくて、あえて動こうとしているような瞬間ではなく、休憩中に胡座をかいて髪を結っている仕草に注目しました。
技法的に工夫したのは、段ボール表面の板紙を慎重に剥がしてヒモ状に切り、さまざまな方向から交差させて人体の曲面を表現したこと。また、作品を観る人がドキッとする設置方法にしようと、おもりの位置や重さを調整しながら、不安定に見えても倒れることのない最適な角度を探っていきました。制作の終盤に時間が余ると、無駄に要素を足してしまうことがよくあるのですが、講評では設置方法のアドバイスをはじめ、その点も指摘していただき、自分なりにとても納得できました。選抜作品に選ばれて、ふじ・紙のアートミュージアムで展示できたことも貴重な経験です。
(1年|佐々木里桜さん)

彫刻C 2年次開講

上段・左:第二課題の立体作品

上段・右:第一課題のドローイング

下段:第三課題の立体作品

布、鉄、洋服かけ|H3500 × W1000 × D2000mm

表現への向き合い方が変わる転換点になった

「表現すること」をテーマした2年次前期の授業です。何もない部屋の中で3日間椅子に座り続けて観察して何かを発見する第一課題、第一課題で発見した何かを垂木で表現する第二課題、第二課題で表現したことをガラクタを用いて表現する第三課題と、3つの課題に取り組みます。はじめに課題を聞いたときは何を問われているのかよく理解できなかったのですが、「この世界に初めて来た人の気持ちになって視覚だけに頼らず感じてみよう」と観察やドローイングを続けていたところ、目の前にある壁―平面だと思っていた大きな壁が厚みをもって“そこに在る”と感じられた瞬間があり、その気付きを第二、第三課題でも表現してみました。
この課題までは見えるものや在るものばかり優先していた私ですが、思い出すことすら難しい、本当に一瞬の感覚に正直でいられたからこそ掴めたものがありました。観察する、かたちにするとはどういうことなのか、考え方や制作スタイルが変わる転換点になった授業です。
(2年|大塚珠生さん)

彫刻H(プランニング/エクササイズ)3年次開講

印画紙、コピー用紙、スチレンボード、枝、油粘土|サイズ可変

実験と習作、先生との対話を重ねることで多くの発見があった

本格的な自主制作が始まる専門課程の準備段階として、興味のあることや挑戦してみたい表現について実験と習作を繰り返し、マケット(模型)でプレゼンする3年次最初の授業です。私は写真などの平面の中で起きる空間認識と、彫刻という実際の空間で起きる空間認識との関係について、フォトグラムに着想を得た暗室でのプリントワークや、プリントを素材にした立体制作を通して考えました。先生との対話を重ねる中で、自分では気付けなかった着眼点や表現の可能性、コンセプトメイキングの大切さにも意識を向けられるようになったと思います。
今、塑像工房とブロンズ工房を拠点に制作していますが、彫刻学科は「その工房にいるからその素材でなければならない」という縛りもなく、自由な制作ができています。平面の中の空間として写真をはじめ、油絵、日本画、水墨画、版画、マンガとすべてに興味があり、3DCG、スキャナー、プリンターを用いた作品にも取り組んでいきたいです。
(3年|松永祥馬さん)

彫刻M(逸脱)4年次開講

『Man』

鉄|H1550 × W600 × D400mm

卒制のコンセプトや技法を突き詰められた自由課題

「逸脱」をテーマに、4年生全員で展覧会を企画する授業で制作した作品です。私は3年次後半から、現実に存在する・しないにかかわらず、生きたものの彫刻表現を「有機体彫刻」と名付けて、有機体彫刻の雄々しさの表現を作品のテーマにしています。生命は諸器官の有機的な集合体―この自然の摂理をヒントに、鉄を限界まで細かく裁断して、バラバラになったピースを再び異なるかたちに溶接・研磨する技法も考案しました。石材や丸太に手を加える石彫や木彫では、手を加え過ぎてしまうと素材そのものが持っている良さが失われてしまうと感じていたのですが、鉄を扱う場合はすでに加工された製品として手元に来るため、逆に自分でコントロールし切ってみようと思ったことがきっかけです。
制作しているときは自分なりの技法を用いる必然性が固まっておらず、講評でも指摘されましたが、この作品があったおかげでコンセプトや技法を突き詰めることができ、卒業制作にもつなげることができたと思っています。
(4年|徳竹玲音さん)