三浦均

三浦均(みうら・ひとし)
MIURA Hitoshi

専門
コンピュータグラフィックス
Computer Graphics
所属
映像学科
Imaging Arts and Sciences
職位
教授
Professor
略歴
1999年4月着任
1962年神戸生まれ
京都大学理学部卒業
神戸大学大学院 自然科学研究科
博士課程修了(理学博士)
研究テーマ
コンピュータグラフィックスを世界を見るための道具と考えています。ゼミ生は主にCG・アニメーションなどの映像作品を自由なテーマで制作しています。

京都大学理学部卒、神戸大学大学院自然科学研究科博士課程修了(理学博士)
物理学、天文学などを学ぶ。
理化学研究所基礎科学特別研究員を経て'99年武蔵野美術大学着任、現在、造形構想学部映像学科教授。

主な活動歴、受賞歴など:
'18年「映像詩 宮澤賢治 銀河への旅~慟哭(どうこく)の愛と祈り~」(NHK BS4K開局特別番組)、CG制作
'04年、国立天文台「4次元デジタル宇宙プロジェクト」共同研究開発メンバー、フジテレビ開局45周年特別記念番組「地球45億年の奇跡(第二夜・青い地球が生まれた日)」(2004年3月2日放映)に世界初公開の惑星誕生CG映像提供。
'02年、芸術科学会 DiVA展 優秀賞受賞
日本SGI賞 '98年、日経サイエンス主催ビジュアルサイエンスフェスタ 優秀賞受賞他、雑誌やテキスト、全国の科学館等に科学計算に基づいたCG映像を提供している。
国立天文台「4D2Uプロジェクト」に参画。

著書:
『映像のフュシス』(武蔵野美術大学出版局 '20年)

Our department takes a pragmatic approach, teaching a wide range of video, photo, animation, and contemporary artwork through both lessons and group work. Within the department, I am primarily responsible for CG (computer graphics). CG methods can be applied to the production of various images and animations. My personal background is in physics and astronomy, and I create scientific visualizations based on my knowledge of the natural sciences. Students can create artwork freely with the support of faculty members and through discussion with Japanese friends who have a wide range of skills.


これまでの歩み

私にとって、コンピュータグラフィックスは世界を見るための一つの手段です。私の関心はこの世界と宇宙を根源から理解したい、という動機に根ざしています。
学生時代は、物理学や天文学を学びました。物理学の中でも、カオス、フラクタル、複雑系といった非線形の世界に惹かれていました。現実の世界は、人の心理や意識、言語活動、経済活動など、一筋縄ではいかない現象に溢れています。人間もその一部である自然界は大変複雑であり、単純な予測を許しません。
学生時代から、文学や哲学の本を読み、映画を観ました。それはこの世界を理解したいという思いからでした。ジャンルを問わず様々な先人の考えや作品から、自然科学を学ぶ場にいつつも、影響を受けてきたと思います。やがて表現する手段としてCGに出会いました。
だれも見たことのない現象を、目に見える映像にすること。見えないものを見えるようにすること。CGは、私にとって世界や宇宙をよりよく理解するためのカメラのようなもの。それは世界を違う視点から見たい、というドキュメンタリー的な試行に似ていると思います。
これまでの自分の仕事を振り返ると、自然とそこで織りなされる現象とそれを目に見えるように表現することに興味があるのだと思います。

写真:地球型惑星形成を数値計算に基づいて作成したコンピュータグラフィックス。
CG制作:三浦均
(数値データ提供:小久保英一郎)

美大での教育

美術大学に通う人たちは数学や物理に苦手意識をもつ人は多いでしょう。それでかまわないと思います。楽譜が読めることと音楽を楽しめる能力とは異なります。楽譜が読めるほうが楽しみも理解も広がりますが、楽譜がなくても音楽は楽しめます。同じように、数学ができれば制作の楽しみが広がりますが、CGをはじめるにあたって数学や物理の知識はほとんど必要ありません。それよりも大切なのは、世界に対する「関心」です。
CGは私にとっては、世界を見る手段の一つです。映像を通して、自然のエッセンスを伝えられたらいいな、と考えています。生命活動を含めた自然現象に対して鋭敏であることは、どのような作品を作るにしてもとても大切だと思うからです。
「映像」が扱う対象は、世界そのものであり、人間であり、自然現象です。人工的な世界も、元をたどれば自然の中からやってきた「もの」でできています。
美大で過ごす4年間は、1年次、2年次は基礎的な内容に時間をかけて取り組むことになるでしょう。手が動かなければ、思うように作品も作れないからです。3年次、4年次になれば、本格的な作品作りがはじまります。アニメーションの作品を制作するとしたら、CGソフトや編集ソフトの使い方に習熟することはある程度大切な要素の一つです。ただそれは、基礎体力のようなもので、それだけでは作品をつくることはできません。
どのような作品であれ、それをつくることは一つの世界を生み出す創造の行為となります。観察して気づいたこと、アイデアをどのように現実世界の作品へと形にしていくのか。目に見える形にしたい、という強烈な内的動機から、最初の細胞分裂が始まり、作品は生み出されるのです。
作品世界を構想する力とそれを基底でささえる観察眼は大切です。生き物や人間に対する洞察力・共感力、物語や神話的思考に対する感受性、文明論的な視点といった要素も作品に広がりと深みを与えるでしょう。そのなかでももっとも大切なもの、それは自然や物事や感情をじっくり観察し、洞察する力です。映像という分野は、人間も含めた、世界の全体を光でとらえる、「専門のない専門分野」なのです。
ゼミや少人数の講義では対話的な姿勢を重視しています。光の美しさ、見えなかった世界が見えるようになること。創造的に世界を見ることができるようになること。その手助けをすること。これを教師としての自分の役割だと考えています。
これまでのゼミ生達は、CG作品やアニメーション作品にとどまらず、実験映像やインスタレーションといった分野の作品をつくってきました。