春原史寛(すのはら・ふみひろ)
SUNOHARA Fumihiro
- 専門
- 近現代日本美術史、博物館学、美術教育、ポップカルチャー研究
History of Modern Japanese Art, Museology, Art Education, Popular Culture - 所属
- 芸術文化学科
Art, Culture and Design Studies - 職位
- 教授
Professor - 略歴
- 2018年9月着任
1978年長野県生まれ
筑波大学大学院 博士後期課程 人間総合科学研究科芸術専攻修了
博士(芸術学) - 研究テーマ
- 岡本太郎と近現代日本美術受容史、学校・美術館における美術鑑賞教育、イラストとポップカルチャー研究。
筑波大学卒業後、'01年から'06年まで財団法人大川美術館(群馬県桐生市)学芸員として、画家・松本竣介を中心とした近代日本美術史の調査研究と13の企画展運営に関わる。
その後筑波大学大学院博士前期課程修了、'09年から'11年まで山梨県立美術館学芸員として、日本画・工芸の調査研究、担当展「小林一三の世界展―逸翁美術館の名品を中心に」「浅川伯教・巧兄弟の心と眼―朝鮮時代の美」などの企画運営や教育普及事業に関わる。
'12年山梨県立博物館学芸員として日本中世・近世絵画・彫刻の調査研究、世界文化遺産登録を控えた富士山の民俗調査などに関わる。
'13年から'18年8月まで群馬大学教育学部美術教育講座准教授として図画工作科・美術科における美術史やミュージアムの活用、美術鑑賞教育などの研究を行い、美術館と連携したワークショップ、市民向けアート・マネージメント講座やアーティスト・イン・スクール事業のマネージメントに関わる。
'16年に博士論文「岡本太郎研究―戦後日本美術の受容と芸術家イメージ」(筑波大学)によって博士(芸術学)の学位取得。
'18年にはアーツ前橋(群馬県前橋市)企画展「岡本太郎と『今日の芸術』―絵はすべての人の創るもの」に企画協力(企画提供)。
https://researchmap.jp/sunohara/
Focusing on the reception of art, I am researching what kind of significance and role many people expect art to play in postwar Japanese society, and what kind of image they have of artists.
I also research and practice art education and museums as a means of connecting art culture and society, as well as the use of pop culture, an expression familiar to people on the periphery of art.
Furthermore, based on my experience as a curator, I am attempting to create new value for museums of various genres, such as art, history, folklore, and natural history, by bringing in new perspectives through art and connecting materials from other fields, through collaboration between science and art.
近現代日本における美術の受容と「芸術家」イメージ―岡本太郎研究を中心に
美術の受容に注目し、戦後日本の社会において、人々が美術にどのような意義や役割を期待し、芸術家にはどのようなイメージを抱いてきたのかを研究しています。特に、美術の専門家や愛好者ではない一般の人々が発する「美術はわからない」という素朴な疑問の言葉は、何を期待しているもので、その言説はどのような変遷をたどっているのか、そこに美術教育やミュージアムはどのようにかかわってきたのかについて、検討しています。
その検討のための具体的な芸術家として岡本太郎(1911-96年)を取り上げ、社会と(アヴァンギャルド)芸術を結び付けることを自らの役割と自認して、作品制作(平面、立体、陶、書)、デザイン(プロダクト、建築)、パフォーマンス、著述、日本の伝統探求、メディアへの出演など、アートと人々のあらゆる接点の可能性を探ったその芸術と生涯に注目して、岡本が作り上げようとした戦後日本の新たな自由に基づくアートのイメージと役割について考察しています。
教育においては、この研究の成果を踏まえて、芸術と社会をつないで、アートと生活が同一化されるほどの状況に至るために必要な物事や環境について、学生とともに考えています。
映画『太陽の塔』予告編
2018年公開、関根光才監督
春原史寛 出演
https://youtu.be/-PAtxrK7JDo
ジャンルを超越するミュージアムの活用と美術教育、アート・マネージメントとプロジェクト
美術、歴史・民俗、自然史などの様々なジャンルのミュージアムについて、サイエンスとアートの協同などにより、アートによって新たな視点を持ち込み、他領域の資料をつなぐことで、新たな価値を創造することを試みています。あわせて、ミュージアムを活用した教育が、学校の一斉・同一内容教育に多様性を回復し、教科の超越する可能性と意義や、博物館学芸員の養成と学校教育の関係などについても研究しています。
それらの研究の成果によって、本学の授業では学生とともに、モノが内部や背後に持つ多ジャンルの情報であるコトに注目してミュージアムを考えたり、キュレーターの手法や思考、視点をミュージアム外のアート・マネージメントやアート・プロジェクト、あるいは美術鑑賞教育に導入することで、それぞれの場を活性化・多様化させる方法を検討しています。
芸術文化学科春原ゼミ活動の記録 http://apm.musabi.ac.jp/geibun/semi/sunohara-semi/
アートの内側と外側をつなぐ―身近な表現・文化とポップカルチャー
アートの枠の外に位置付けられているものの、子どもたちや一般の人々にとって「表現」としてはごく身近なイラストや落書き、アニメ・マンガ・ゲーム、あるいはSNSにアップされている写真などと、現代のアートがどのように結び付く可能性があるのか、そのつながりによって人々が多様なアートに自発的に親しむことをできないか、アートの内側と外側を、ポップカルチャーによってつなぐ方法を研究しています。加えて、デザイン領域のイラストレーションが、現代のプロとアマチュアが混在する身近な表現である「イラスト」にいかに変化してきたのか、イラスト文化史を調査しています。
また、教育においても学生が消費行為によって長らく親しみ続けてきた表現であるポップカルチャーと、鑑賞される対象である現代アートの先端的な表現が、どのように類似していていかに異なるのか、その両者の架橋を意識した授業を行っています。
「私たちは映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』をどのように見たのか―ポップカルチャーが社会で担う芸術文化としての役割―」
オンライン模擬授業(2021年9月)
https://youtu.be/zRmydzHB9X0
主な著書
『超現実主義の1937年――福沢一郎『シュールレアリズム』を読みなおす』
伊藤佳之・大谷省吾・小林宏道・春原史寛・谷口英理・弘中智子
みすず書房、2019年2月
『漫画と訳文』
岡本一平・名取春仙・仲田勝之助著、春原史寛解説
国書刊行会、2019年4月
『とがびアートプロジェクト 中学生が学校を美術館に変えた 新版増補』
茂木一司責任編集、住中浩史・春原史寛・中平紀子・Nプロジェクト編
東信堂、2021年8月
主な論文
- 「岡本太郎《太陽の塔》の研究」『藝叢』18号、2002年3月 https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/records/48123#/.Yi-gVHrP1PY
- 「岡本太郎《太陽の塔》の保存をめぐって」、眞保亨先生古稀記念論文集編集委員会編『芸術学の視座 眞保亨先生古稀記念論文集』勉誠出版、2002年6月
- 「岡本太郎《太陽の塔》をめぐる言説―その受容と評価、日本万国博覧会と美術・建築・デザイン」『藝叢』24号、2008年3月 https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/records/42513#.Yi-f1nrP1PY
- 「岡本太郎「縄文土器論」の背景とその評価―戦後日本の「美術」と「縄文」をめぐる動向についての一考察」『藝叢』25号、2009年3月 https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/records/42506#.Yi-fgHrP1PY
- 「岡本太郎『今日の芸術』(1954年)とその読者―美術書出版による専門家からの美術の解放」『藝叢』29号、2014年3月 https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/records/42483#.Yi-gE3rP1PY
- 「岡本太郎と美術教育に関する一考察―『今日の芸術』(1954年)と創造美育運動に注目して―」『美術教育学研究』47号、2015年3月
- 「「イラストレーション」と「イラスト」のあいだ―アートとサブカルチャーを結ぶ一九六〇年代からゼロ年代の動向―」『コンテンツ文化史学会2016年大会予稿集』、2016年12月
- 「ポートレート写真撮影実習による美術理論と実技の融合についての試論―図画工作科・美術科授業における写真作品撮影プロセス活用のための一考察―」『群馬大学教育学部紀要 芸術・技術・体育・生活科学編』53号、2018年1月 https://gair.media.gunma-u.ac.jp/dspace/handle/10087/11794
- 「美術史授業における理論・鑑賞と実技・表現の往還を目的 とした「公的な落書き」とシュルレアリスム理論の学修―教員養成学部での実践と小学校図画工作科・中学校美術科への展開の可能性―」『群馬大学教育実践研究』35号、2018年1月 https://gair.media.gunma-u.ac.jp/dspace/handle/10087/11714
- 「「わかりやすい」サブカルチャーの消費と「わからない」アートの鑑賞―学校外に位置付けられたアニメ・マンガ・ゲームの文化的体験と学校内の美術教育を架橋する」、日本教育大学協会全国美術部門関東地区会『美術教育の理論と実践』編集委員会編『美術教育の理論と実践』BookWay、2018年6月
- 「現代日本の大学におけるアートと社会を接続する「芸術文化」学関連教育とマネジメント科目授業の展開に関する一考察」『武蔵野美術大学研究紀要』50号、2020年3月 https://drive.google.com/file/d/1lNTWlSEl3DoUEIthXz2TYCPrfihUc2-g/view
- 「日本社会における落書きからラクガキへのイメージ変遷―アートの社会普及に寄与する現代のラクガキの役割を考える」、小澤基弘監修・ラクガキを考える会編『ラクガキのススメ』あいり出版、2020年4月
- 「日本の美術大学における卒業制作・卒業制作展の位置付けと社会的イメージの史的変遷に関する一考察」『武蔵野美術大学研究紀要』51号、2021年3月 https://drive.google.com/file/d/1kh8QTt-o3dF_CeeZvjwf60lm0iCftqsM/view
- 「池田龍雄《むれ》(「禽獣記」シリーズ)と一九五〇年代の社会と美術をめぐって」、五十殿利治監修・寺門臨太郎責任編集『美をめぐる饗宴 筑波大学アート・コレクション 石井コレクション』筑波大学出版会、2021年8月
- 「日本における博物館展示論の研究・普及の史的展開についての一考察―美術館展示の独自性に注目して―」『武蔵野美術大学研究紀要』52号、2022年3月
主な担当展覧会
- 「描かざる幻の画家 島崎蓊助遺作展」展(大川美術館、2002年)担当学芸員
- 「静謐の競演 駒井哲郎・清宮質文 二人展」(大川美術館、2002年)担当学芸員
- 「画家の動と静 鶴岡政男と松本竣介」展(大川美術館、2003年)担当学芸員
- 「ヒューマニズムの画家 ベン・シャーン展」(大川美術館、2004年)担当学芸員
- 「池田良二 地層への回帰」展(大川美術館、2004年)担当学芸員
- 「漂泊の中にみつけた美 村上肥出夫と放浪の画家たち」展(大川美術館、2004年)担当学芸員
- 「織都・桐生に生きた抽象画家 オノサト・トシノブ」展(大川美術館、2005年)担当学芸員
- 「地域文化芸術振興プラン推進事業・ミュージアム甲斐ネットワーク事業 やまなしの美術館大全」展(山梨県立美術館、2009年)担当学芸員
- 「小林一三の世界展 逸翁美術館の名品を中心に」(山梨県立美術館、2010年)担当学芸員
- 「浅川伯教・巧兄弟の心と眼―朝鮮時代の美」展(大阪市立東洋陶磁美術館・千葉市美術館・山梨県立美術館・栃木県立美術館、2011-12年)担当学芸員
- 「岡本太郎と『今日の芸術』 絵はすべての人の創るもの」展(アーツ前橋、2018-19年)企画協力(企画構成)
- 「子ども体験塾 アートを遊ぶみんなの展覧会」(羽村市生涯学習センターゆとろぎ、2019年)企画立案・運営
- 「永遠の求道 小倉尚人展」(東御市梅野記念絵画館・ふれあい館、2019-20年)ゲストキュレーター
- 展示スペース「ゆとろぎ美術園―ムサビ芸文 アートの日常実験室―」(羽村市生涯学習センターゆとろぎ、武蔵野美術大学芸術文化学科研究室協力、2021年-)企画立案・運営 http://apm.musabi.ac.jp/yutorogi-bijutsu-en/
「やまなしの美術館大全」展
山梨県立美術館、2009年
「子ども体験塾 アートを遊ぶみんなの展覧会」
羽村市生涯学習センターゆとろぎ、2019年
「永遠の求道 小倉尚人展」
東御市梅野記念絵画館・ふれあい館、2019-20年