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今野千尋 / 第1回受給生
デザイン情報学科 2009年3月卒業ノッティンガム・トレント大学修士課程 Graphic Designコース2009年-2010年
クラスメイトが作った髭を使ってみんなで撮り合いました
修士課程での学びとは
イギリス、ノッティンガムへ来て約10ヶ月。日本を中心に見ていた世界がイギリス中心に変わりました。
ここ、ノッティンガム・トレント大学(以下NTU)のArt&Design修士課程コースでは、その大半を留学生が占めており、わたしの専攻するGraphic Designコースの今年のメンバーも、イギリス、アイルランド、ギリシャ、キプロス、アメリカ、タイ、インド、中国、台湾、日本といった様々な国の、異なるバックグラウンドを持った学生で構成されており、この多様さのなかで制作することは自分の考え方が世界の中でどのように捉えられるのか、どこまで通用するものなのかを知るひとつの目安にもなりますし、彼らと意見を交わし合えることは刺激的です。
修士課程であるGraphic Designコースでは、自分で学習計画を立て、自分でプロジェクトを管理していくことを求められます。学生はコース開始時にどのようにプロジェクトを進めていくかを、”Learning Agreement”というドキュメントにして提出します。各自が自身のResearch Questionを見つけ出し、それに応えるResearch methodを設定するのですが、特に修士課程の学習の中ではResearch processとResearch methodについての講義がたくさん設けられています。NTUの修士課程は1年という短期間でいて、学生自身に任される部分が多いので、自発的且つ計画的な行動が重要です。
ムサビとNTUを比べてみて
大学時代を振り返ってみますと、こちらの学生と比べても武蔵野美術大学の学生は全体的にパワフルでした。武蔵野美術大学の学生には、言われなくても要求された以上のことを返すサービス精神みたいなものが備わっていたように思います。また、作品を完成させるだけではなく、それをどうオーディエンスにプレゼンテーションするのが効果的か? というところまで考える力が高いと思います。
私が所属していたデザイン情報学科の学習の進め方には、こちらでの Graphic Designコースと似ているところが多々ありました。例えば、リサーチドキュメントを大切にすること、制作過程をブログに記録していくこと、プレゼンテーションが多かったことなどです。このおかげで、今わたしは比較的ギャップを感じることなく学習できています。
日本とのギャップについて
ただ、学習面以外では、渡航前の準備からギャップを感じることが多かったです。まず最初の壁が、英国ビザの日々改正されていくルールに追いついていくことでした。ビザ申請に必要な書類集めにとても時間がかかったのですが、ここで日本とイギリスの違いを痛感することになります。イギリスのオフィスでは1つのことを頼んでも対応にとても時間がかかり、人によって言うことが違かったり、たらい回しにされたり、頼んだことを忘れ去られることだってあります。こちらから何度と催促してようやく、お願いしていたものが手に入ります。して欲し¬いことは早めに、根気強く働きかけていかなければいけません。
語学力とコミュニケーションについて
渡航後は、大学院が始まる前の3ヶ月をNTUの語学学校で過ごしました。初日にクラス分けのテストがあり、その結果、同じ語学レベルのクラスメイトと共に学ぶことになるのですが、授業が始まると皆が流暢に喋り始め、ディスカッションも問題なくこなしていくので、同じレベルとは思えない! と、とても戸惑いました。日本人は下手に単語力があるためか、スピーキングができないのに上のほうのレベルに振り分けられてしまうようです。授業では「メディア論」、「グローバリゼーション」に関するディスカッションのほか、語彙・文法、リスニング、ライティング、エッセイ、プレゼンテーションについて学びました。
語学学校6週目からは、MA Art&Design Bridging courseというクラスへ移動しました。これは名前通りArt&Designの修士課程への進学者向けの英語クラスで、授業内容もよりArt&Designにフォーカスされたものです。
自分の語学力については、修士課程の授業が始まってから焦りを感じました。語学学校にいたときよりもネイティブの人と接する機会が増え、彼等の口調の速さと、イギリス英語のアクセントに苦労しました。人によって聞き取りやすい・聞き取りにくいということは今でもあるのですが、それはひたすら色んな英語を耳にし、練習を重ねるしか克服の道はないのだと思います。ただ、人との輪を広げられるかは語学力の問題よりもこちらからの積極的な働きかけが重要で、英語がままならかったわたしでもどんどん人に向かっていったことで、友達はたくさんできました。
住まいのこと
住まいについては、語学学校の間は、5人でキッチンとリビングをシェアする学生寮に短期契約で入居していました。ここは各自の部屋にトイレ・シャワーが付いていました。寮の立地や使い勝手に問題は無かったのですが、わたしは制作スペースと作業に集中できる静かな環境を求めていたため、語学学校で知り合った中国人の女の子とフラット探しを始め、大学院が始まる前に一般のフラットへ引っ越しました。学科は異なりますが、彼女もArt&Designの修士課程の学生なので、共通の悩みを相談し合うことができて心強いです。
最後に。日本の外へ出るという決断には最初は大きなエネルギーが要りますが、一度出てしまえば途端に身軽になってしまうものだと実感しています。物事を考えるときに、世界というより大きな範囲で捉えられるようになったこと、日本の社会や文化の良さにも悪さにも気づくことができたことなど、この留学で得るものはデザインのことだけではなく、人間として成長する経験でもあり、その経験はまたデザインに還っていくことと思います。このような機会をいただいたことに感謝しています。