穴原由唯Anahara Yui

作品写真:海の生き物かるた
作品写真:海の生き物かるた
作品写真:海の生き物かるた
作品写真:海の生き物かるた

海の生き物かるた
魚たちの知られざる生態を学ぶKaruta of sea creatures ―Learn the unknown ecology of fishes

PaperH210 × W148mm H450 × W1200mm H35 × W150 × D100mm

身近な食材だけれども、実は知らないことがたくさんある。そんな海の生き物についてのかるたと本を製作しました。1種の生き物を取り上げて深く知ることの出来るかるたです。かるたで海の生き物に興味を持ってもらい、詳しく生態を知ることが出来る本を読むことでより関心を高めてもらうようになっています。今回の卒業制作では、家庭内で消費される1位~3位の魚介(平成23年総務省家計調査より)であるサケ・イカ・マグロの3種を取り上げました。

穴原由唯

日本人が好むトップ3の魚のかるたは、子供のためであると同時に大人にも有益である。身近な存在でも知らないことが多いからだ。情報を網羅した読み札はユーモアあふれる「ん」のコピーで完結し、クリアなイラストの絵札は堅牢で実用に耐えそう。計画的な制作遂行のたまものである。獲れたての魚が朝市に並ぶ海浜リゾート地で、家族そろってかるたと本とを楽しむ一幕を想像する。家庭や学校ばかりでなく、そんな光景が出現することを予感させる魅力を秘めた作品なのだ。

デザイン情報学科教授 森山明子

内田里菜Uchida Rina

作品写真:紙―自宅でできる手漉き紙の素材研究―
作品写真:紙―自宅でできる手漉き紙の素材研究―

紙―自宅でできる手漉き紙の素材研究―Paper ―material research of handmade paper at home―

紙、紙漉きPaper, papermakingH120 × W120mm ×20点

わたしたちの身の回りには、紙があふれている。それらは、用途に合わせてつくられた「製品の紙」だ。では、製品ではない紙とは何だろうか。それは、まだ用途のない「素材の紙」だと考える。そこで、紙製品を一度パルプに戻して漉き直し、使用目的を持たない、素材としての紙をつくった。普段の生活で触れる機会が多い紙製品を用い、自宅で紙を漉いて再構築することで、身近なところから「紙」というものを見直したいと考えた。作品を通して、日本の紙漉き文化の片鱗を感じ、また、製品ではない、素材としての紙に目を向けるきっかけにしていただきたい。

内田里菜

本作品は、主に2つの点が高く評価された。1点目は、普段意識しながら使っていない紙の製造過程に着目し、自ら試行錯誤で紙を漉き、その行程を記録しながら、成分比較による紙質(厚さ・重さ・耐水性など)の違いを明らかにしていったこと。2点目は、手漉きの行程を映像ドキュメントとして提示しながらその成果を見本貼として丹念にまとめ、鑑賞者に紙漉きをぜひ自宅で挑戦してみたいと思わせる内容に仕上がっていたことである。デザイン情報学科では、作品のテーマ性や完成度に合わせて、研究的アプローチとそのドキュメントも評価対象としている。本作品はこれらすべての評価が高い水準で一つの成果になっており優秀賞として選ばれた。

デザイン情報学科准教授 白石学

小林桃子Kobayashi Momoko

作品写真:松野正子展―児童文学の世界―
作品写真:松野正子展―児童文学の世界―

松野正子展―児童文学の世界―Masako Matsuno Exhibition ―A world of Children’s literature―

本|紙、くるみ製本、木Book| Paper, case binding, woodH225 × W220mm ×2点

私の祖母・松野正子は1935年に愛媛で生まれた児童文学作家である。彼女は1960年にアメリカで作家としてデビューして以来、70冊もの本を世に送り出してきた。現在でも彼女の児童文学は沢山の子供に愛されている。そんな松野正子の児童文学の魅力とはなんだろうか。「松野正子展」では彼女の児童文学を研究した展示を行う。公開するものは作品や原稿、松野正子の年表など。これらを通して、松野正子の児童文学の魅力を紐解いていく。

小林桃子

留学中の米国において松野正子は日本人初の英語の絵本でデビューし、70年余の生涯で70冊もの著作を残した。2011年まで存命だったこの祖母の展覧会を想定した図録は、そのまま公刊できる水準に達している。記憶と記録の優位性を活かしつつも客観性を保った叙述、長新太らの絵をえた著作群による文学展であり美術展である企画。編集とデザインの技を駆使したこの作品は、本学科が目指す研究領域の一角を鮮明にする。研究を継続しての『評伝・松野正子』にも期待したい。

デザイン情報学科教授 森山明子

鷹野俊輝Takano Toshiki

作品写真:黄金の茶室
作品写真:黄金の茶室
作品写真:黄金の茶室
作品写真:黄金の茶室

黄金の茶室Golden tea room

インスタレーション|画鋲、木材Installation art |Thumbtack, woodH1920 × W2730 × D2730mm

黄金の茶室は1586年につくられた、千利休と豊臣秀吉との共同制作作品である。表面的な華やかさではなく質実な美を尊ぶ利休にとって黄金の茶室の制作は、秀吉の無理難題、いじわるであったとも推測される。しかし利休はひるむどころか見事な黄金の茶室をつくりあげ、賞賛を得た。そのとき秀吉は利休に、自分の地位を揺るがしかねない才気、恐ろしさを感じたのではないだろうか。そこで、金箔部分を全て画鋲に置き換え、秀吉の目に映ったかもしれない黄金の茶室として表現した。

鷹野俊輝

豊臣秀吉が作った「黄金の茶室」は、千利休との微妙な関係を表すエピソードとして取り上げられることが多い。現在でも日本各地にいくつかの復元例が見られるようにセンセーショナルな存在だが、鷹野はプロクシミクス(proxemics =近接空間学)にヒントを得て、画鋲という梃子(てこ)を支点に、鑑賞者と対象との近接関係によって黄金の意味を反転させた。「黄金とわび茶」の緊張に新たな解釈を加える作品として評価したい。

デザイン情報学科教授 今泉洋

山下幹弘Yamashita Mikihiro

作品写真:Lettershaping 息する時間を内包する文字
作品写真:Lettershaping 息する時間を内包する文字

Lettershaping 息する時間を内包する文字Lettershaping Letters with time sequence

書道、映像|紙、アクリル、バルサ材、アルミ缶Calligraphy, video|Paper, acrylic board, balsa, aluminum canH2700 × W2000 × D1500mm

デジタル環境の発展で私たちは様々な活字に囲まれているが、欧文活字書体の背景には紀元前後から培われてきたカリグラフィーの伝統がある。システマチックに均一化されてきた現代の中で、手書き文字の芸術的価値は見直されてきている。身体を伝わって生み出された線の集合が文字として意味をもち、その中であえてノイズを生み出すことは、文字が人の手によって書かれている証明にもなる。バルサ材やアルミ缶を用いることで、それぞれの文字に表情をあたえた。

山下幹弘

「カリグラフィー」と言うと、紙の上に書かれた文字のかたちやデザインされたフォントの美しさ・可読性に注目が集まるが、これは「書」という行為そのものをデザイン情報学的にとらえなおす試みである。その本質は精妙な身体動作にあり、表現としての書はその軌跡をいかに残すかという問題であるとして、支持体、絵の具、筆までを見直した。擦れなどノイズを取り込むことで身体性を想起させる新たな枠組みを見いだしたことを喜びたい。

デザイン情報学科教授 今泉洋

湯浅由伎子Yuasa Yukiko

作品写真:はさみのじかん
作品写真:はさみのじかん

はさみのじかん
―こども用はさみを通して見る「デザインの選定」の研究―time for scissors ―Study of “the appropriate choice of the design” from scissors for children―

本|紙、無線綴じ製本、木Book| Paper, perfect binding, woodH182 × W128mm H182 × W257mm

あなたは自分の子どもに「はさみ」を与えるとき、何を基準に選びますか?最近では子どもに合わせてあらゆる工夫を施したはさみが多く販売されています。これらの多くは「安全性」を売りにしているはさみですが、目先の安全性にとらわれず、本当に子どものためになるデザインを見極めることが重要となってきます。この本は、「子どものためのデザイン」を保護者自身が見極め、子どもが力を発揮することができる製品を保護者が選び与えられるようになる考え方を磨くための本です。

湯浅由伎子

おそらく、保護者が子どもに買い与える最初の刃物は「はさみ」だろう。いくら「子ども用」とはいえ、「はさみ」は刃物であり、本来、危険な道具に違いない。市場に出まわる安全性に配慮したという様々なデザインの「子ども用はさみ」を可能な限り多く購入し、独自の視点と指標で比較分析した地道な研究をもとにまとめたこの本は、「子ども用はさみ」に限らず、道具と使用者との関係を見極めてデザインを選ぶことがいかに重要かを気付かせるデザイン論でもある。

デザイン情報学科教授 長澤忠徳