2017年度 武蔵野美術大学入学式典

日時 2017年4月4日(火)9:00開場予定 10:00開式
場所 武蔵野美術大学 体育館アリーナ

式次第

  • 開式の辞
  • 校歌斉唱
  • 学長式辞 学長 長澤忠徳
  • 理事長祝辞 理事長 天坊昭彦
  • 教員祝辞 教授 黒坂圭太
  • 卒業生代表祝辞 小杉幸一
  • 学生パフォーマンス
  • 閉式の辞

会場風景

式典スタッフ

監修 牧野良三(通信教育課程教授)
演出 角岳史
振付/ダンサー 坂口江都子
照明 望月太介(株式会社アート・ステージライティング・グループ)
音響 遠藤廣人(株式会社コーストライン)
舞台施工 桂賢一郎/古川俊一(東宝舞台株式会社)
映像 大田晃/山崎連基(映像学科講師)
映像配信 渡辺真太郎(デザイン情報学科講師)
舞台監督 畑崎広和
ブラスアンサンブル 入江圭亮(Tp.)/伊藤亮(Tp.)/小野健児(Tb.)/伊藤顕治(Tb.)/黛拓郎(Tub.)/長谷川雄基(Perc.)
ダンサー(学生) 青山彩織/石黒言子/大嶋結衣/仲田ゆりえ/松浦愛
人形原型制作 成田輝
覆面デザイン・制作 阿部美里(本学卒業)
装置制作(学生) 浅野明子/安達真琴/今井尚史/乙津幸穂/勝原陽子/菊池風起人/北村彩子/須田みづき/田野倉由佳/長塚信之/長谷川葉平/前田博雅
司会 澤野誠人(学生支援グループキャリアチームリーダー)
協力 白石学(デザイン情報学科教授)/基礎デザイン学科研究室/デザイン情報学科研究室/映像学科研究室/通信教育課程研究室
リーフレットデザイン 平野昌太郎(基礎デザイン学科講師)
印刷 株式会社アトミ
連絡・調整 矢野恵利子/秋山千穂(通信教育課程助手)
美術・デザイン 愛甲佳世(総合美術研究所)

学長式辞

写真:長澤忠徳

武蔵野美術大学学長
長澤忠徳

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。また、ご臨席の保護者の皆さまのお慶びもひとしおかと存じます。おめでとうございます。

また、海外からの留学生の皆さんも、数ある日本の美術系大学の中から本学を選び、難関を突破して入学してくださったことを、嬉しく思っています。

武蔵野美術大学は、皆さんのご入学を心から歓迎し、私たち教職員も、胸躍る嬉しさいっぱいで、今日の日を迎えています。
今日から、ここ、武蔵野美術大学が、皆さんの母校になります。

さて、武蔵野美術大学(ムサビ)は、その前身となる帝国美術学校が1929年に創立して以来、「教養を有する美術家養成」を理念とし、「真に人間的自由に達するような美術教育」を掲げた建学の精神を守り、我が国を代表する私立の美術系総合大学として、国内はもとより、世界で活躍する数多く卒業生を輩出してきていることは、みなさんもご存知のことと思います。

また、創立当初より、世界に眼差しを開き、積極的かつ先駆的に国際化に取り組んで来た本学は、2012年、美術系大学では初めて文部科学省のグローバル人材育成を推進する大学として採択され、語学教育はもとより、精力的に多彩な専門教育プログラムを展開して大きな成果を挙げてきています。

いまや、武蔵野美術大学は、日本のいち私立美術大学としての存在を超えて、我が国の文化、芸術、クリエイティブ産業を支え、リードし、ますます広がるグローバルな世界で活躍する人材育成を使命として担っているのです。

2020年には、東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されていますが、それを契機として、昨年、全国芸術系大学コンソーシアムが56大学の加盟校によって結成され、文化・芸術の分野においても、様々な活動展開が始まっています。今日、入学されたみなさんが活躍される未来社会は、グローバル社会です。世界という視座と、日本という視座と知見をあわせ持ち、これまでの6万7千名を超える先輩がそうであったように、皆さんも、この伝統ある「世界のムサビ」の学生であることを自覚して、大いに学んでください。

さて、「あの水平線の上に立てるか」と題する私が贈ったメッセージを、本学のwebサイトでご覧になった諸君もおられるかと思います。40数年前、私が本学を志願し、入学以来、今日まで持ち続けている、自分への大切なメッセージでもあります。もう一度、このメッセージを皆さんに贈りたいと思います。

「あの遥か彼方に見える水平線の上に立つ」ことを信じて、凪いでいても大嵐でも、私は、もう40年以上も、大海原を水平線に向かって漕ぎ続けているのです。「水平線の上に立つ」ことができるかどうか、私にもまだわかりません。でも、ひたすら「水平線に立てる」と信じているのです。常識や理屈を超えて、「わからないことを、わかろうとする」ことに挑むことが、自分を励まし、奮い立たせてくれるのです。私は、「クリエイティブ、創造的である」ということは、そういうことだと思っています。

クリエイティブであるためには、それに挑む強い「意志」が必要です。この「意志」という言葉の「意」という文字は、「音」と「心」という部分で成り立っています。つまり、胸に秘めた熱い思いというのは、自分にしか聴こえない「心の音」のことなのです。それが、みなさんそれぞれの「個性」なのだと思います。

「表現」とは、そんな自分の「心の音」に耳を傾け、その「心の音」を自分の身体の外に出すことではないかと思うのです。私は、それが「表現」である…と思います。

ですから、表現者たちは、なんとかして「心の音」を外へ出そうと、カタチを作ったり、色を塗ったり、身ぶりや声に出したりしてみて、試行錯誤を重ねているのです。まさに、これは「悶え」でしょう。「表現」は、身悶えしながら「心の音」を自分の外に表出する作業だろうと思うのです。

あなたが、これまで感じ、受け止め、経験して来た「何か」が鳴らす「心の音」を、どのように聴き、どうやって自分の外に表出するかについては、あなた自身で一生懸命に悩み、考え、工夫して、実現しなければなりません。「表現」つまり「心の音」を表出する行為とは、正解のない世界、むしろ、あなた自身が正解を生み出す世界なのです。

入学早々、厳しい話に聞こえるかもしれません。けれど、美術やデザインという「表現」の世界に進んだ勇気ある皆さんは、すでに、その第一歩を踏み出しているのです。だから、今日、ここに居るのです。そして、私たちの思いも、実は皆さんと同じです。ひたむきな創造へのチャレンジに、武蔵野美術大学は、寛容さをもって、皆さんを支えて行く覚悟です。

みなさんが活躍するこれからの時代は、過去と今を起点に予想して「こうなればいい」という未来を描く、従来からの「フォアキャスティング」の発想法だけでは拓けません。実現すべき「未来」に起点を置き、そこから逆に現在を振り返って、今どうあるべきかを構想する「バックキャスティング」というもうひとつの発想法が重要になって来ていると思います。

我が国も世界も、大きな変革の潮流の中にありますが、現状に安住しているだけでは、積み上げてきた伝統を守り、継承していくことも難しいでしょう。次代の端緒を拓き、次世代に活躍する人材を育む新たな武蔵野美術大学へ展開するためにも、従来の発想法に「バックキャスティング思考」を加え、双方向から現在と過去を重ね合わせ、みなさんと一緒になって、実現すべき未来へのロードマップを作っていくことが、私たちの願いです。

昨年、北キャンパスに、世界で最も新しいデザイン工房の校舎14号館が竣工し、そして、つい先日、この鷹の台キャンパスを南北に分断する新五日市街道が部分開通しました。キャンパスが分断することは、ネガティブなこととも思われますが、ポジティブに考えれば、ムサビの地域社会に対する表面積が広がったとも言えるでしょうか。鷹の台キャンパスが南北に分かれたこの歴史的契機に、皆さんと一緒に、ムサビの未来への可能性をさらに開いていこうではありませんか。

さあ、今日から、ムサビでの大学生活が始まりました。時に、辛いこともあるかもしれませんが、辛さの何倍も何十倍も、きっと、きっと、楽しく胸躍る「はつらつとした青春の日々」であることを信じています。

最後に、もう一度、今日、この日からムサビ生となった皆さんに、心からの祝福を贈ります。武蔵野美術大学、入学、おめでとう!

理事長祝辞

写真:天坊昭彦

武蔵野美術大学理事長
天坊昭彦

理事長の天坊です。新入生の皆さん、武蔵野美術大学へ入学おめでとう。皆さんの入学を心から歓迎します。また、ご列席のご家族の皆さん、本日は誠におめでとうございます。ご家族の皆様にとってもお喜びひとしおのことと思います。

私は武蔵野美術大学の理事長に就任して4年経ちましたが、私がムサビに来て初めて気がついたことがあります。それ以来私は入学式や卒業式等皆さんにお話しする機会がある時は、いつもそのことについて話をさせて頂いてますので、本日もその話をさせてもらいます。

新入生の皆さんは、これから美術に関する知識を深め美術の技術力を磨き、腕をあげようと考えていると思います。然しムサビでは同時にもう一つ大事なことを学ぶことになるということをご存知ですか?

それは、美術の創作活動を通して、技術力を磨くと同時に考える力を鍛え、コミュニケーション能力を高めることを学ぶのです。このことは意外にも教えておられる先生も、学んでいる学生もあまり気づいていなかったようなのですが、実はとても素晴らしいことなのです。創作をするためにはその前に自分の想い、自分が訴えたいことは何か、何をもってそれを表現するのか、どういう形にするのか等について、自分の考えを整理する必要があります。そして、それを同僚や先生に発表し、議論し、批判や指導を仰ぎ、更にまた考えを尽くす。その上で作品を作り、その作品を見る人に考えが伝わっているか、先生達の批判を踏まえ自分の考えを伝え、更にいい作品に仕上げていくという教育を4年間繰り返し経験することになります。これはすごいことです。これこそが考える力をつけ対話や説得する力、即ちコミュニケーション能力を高める教育なのです。

世の中で今求められている人材というのは、コミュニケーション能力の高い人材なのです。もちろん、企業や社会の組織に入り、力を発揮していくためには、そこで必要な専門的な知識を身につけなければなりませんが、自分の考えを持ち、周囲の人と対話をして、意見を集約していく力はそう簡単に身につくものではありません。特別な専門領域は別として、ムサビの卒業生が企業や社会の組織に入っても、他大学を卒業した文系或いは理系の人と比べて、基礎的な能力としては考える力とコミュニケーション能力を鍛えてきた本学の卒業生に充分優位性があると思います。そういう意味では、企業経営者としての私の経験から、ムサビは今社会が求めている人材の宝庫のように思えます。

21世紀に入り、ITやスマホの普及によって情報伝達手段が劇的に進化し、また、人口構成の大きな変化があったり貧困の二極化が進んだりして、今や世界も日本もいろんな意味で従来のシステムがそのままではうまく行かなくなって来ており、あらゆる分野で大きな改革(イノベーション)が必要になって来ています。行き詰まった社会のイノベーションにヒントを与える先進性は、芸術にあると言われています。そしてイノベーションは、知恵と創造力が必要です。だからこそ今のような時代には、芸術を学び、美や文化を追求してみることが必要なのではないでしょうか。ということは言い換えれば、いまや社会のいろんな分野で美術系の人材が必要とされているのです。

私は今ここで、美術を志してムサビに入学した皆さんに企業に就職しろというつもりでこの話をしている訳ではありません。この大学で美術を学ぶということは、同時にコミュニケーション能力を高める教育を4年間も学ぶことになり、社会が求めている立派な人材になれるのだということを新入生だけでなく、ご家族の皆様にも是非知っておいて頂きたいと思って話をさせて頂きました。要は新入生の皆さんが、これからムサビで一生懸命勉強すれば、皆さんの将来にはいろんなチャンスがあるということです。

さて、最初に少し違った観点からの話をしましたが、新入生の皆さんにこれから是非とも心がけて頂きたいことを2点申し上げます。

1点目、ここは大学ですから、教室で勉強することが中心となりますが、学内だけに留まらず、機会があれば、というよりむしろ機会を求めてでも、いろんな「フィールドワーク」に積極的に参加して実際に社会の人達と触れ合う実践の場を通して学ぶことにも挑戦してもらいたい。机上で学んだことは、実践によってはじめて体得でき、本当に理解できるからです。フィールドワークは皆さんの社会を見る視野を拡げ、又、皆さんのコミュニケーション能力を試してみる絶好の機会になるでしょう。

2点目、永い人生の中では大学4年の学生生活はあとで振り返ってみればあっという間の短い期間です。出来るだけ多くの教養を身につけるべく、積極的に夢中になって勉強し、一方でいろんな経験を積めるよう是非とも時間を大切に使って欲しいということをお願いして、私の祝辞を終わります。

教員祝辞

写真:黒坂圭太

武蔵野美術大学映像学科教授
黒坂圭太

新入生ならびにご家族の皆さま、ご入学おめでとうございます。全教員を代表し心からお祝い申し上げます。

私は映像学科でアニメーションを教えている黒坂圭太と申します。アニメーションの語源「アニマ」には「命」という意味があります。「命」とは「限りある時間」に他なりません。今日は自己紹介も兼ねて、その話をしたいと思います。

私の少年時代の夢はマンガ家でした。でも親から「それじゃ食べられないから、美大に入って教員免許とり、マンガは趣味で描きなさい」と言われ「なるほど」と納得して、ムサビの油絵学科に進学したのです。ぜんぜん主体性ないですよね。

大学時代も、いわゆる正統派のヨーロッパ美術は何だかピンと来ませんでした。むしろ日本の明治時代に描かれたヘンな油絵、たとえばダヴィンチ風のタッチで描かれた観音様だとか、そういう「悪趣味なパワー」に強く惹かれたのです。同世代の価値観からはズレてたけど、学生時代はそれでも良かった。今みたいにインターネットもなく、外の世界をシャットアウトして自分の殻に閉じ籠っていられたのです。

卒業すると、イヤでも「現代の美術」と向き合わざるを得なくなったのですけど、当時は具象の油絵なんか描いてたら、もう人間扱いされない状況。そんな中でも「自分」を貫けるほど強くない私は周囲に足並み合わせ「現代アーティスト」になりすましていました。でも所詮ニセモノ。もともと形を描くことが好きな私は本音と建前の板挟みで、アイデンティティーがグチャグチャになってしまったのです。

いよいよ鬱状態に陥った私は、治療も兼ねて国外へ脱出しました。ある晴れた日、パリ郊外のカフェで真向いに見える中央墓地の古い石壁をボーっと眺めていた時のことです。右手から90歳くらいのお婆ちゃんが現れ、ゆっくり歩き去って行きました。そして、すぐ後ろから20才くらいの若いママさんがベビーカーを押しながら足早に通り過ぎて行ったのです。一瞬ドキッとしました。この壁は、お婆ちゃんが生まれる前からここにあって、ベビーカーに乗ってた赤ちゃんが年とって死んだ後も今と殆ど変わらない姿でここにあるんじゃないだろうか?突如そんな考えが湧き上がってきました。この時から私は「時間」という意地悪で不公平な存在をリアルに意識し「時間」をキャンバス代わりに絵を描いてみたいと妄想する様になったのです。

とはいえ霞を食べては生きていけないので普通に就職しました。ところが休日を利用し見よう見まねで創り上げた最初のアニメ作品が映像コンクールに入賞。そしたら欲が出て専門的に勉強したくなり勤めを辞め退職金を授業料がわりに29歳で映画学校に入りました。

フリーの映像作家…なんて言うとカッコ良く聞こえるかもしれませんが、その実態は悲惨です。学校を出て結婚、子供も生まれたというのに生活は安定せず、映像の企画は何度となくポシャり、PRマンガやカットなど関係ない仕事も沢山しながら何とか食いつなぎました。

そんな中で創りつづけた作品が少しづつ認められ始め海外の映画祭で賞なども貰えるようになった頃、ムサビから声がかかったのです。その後は大学での仕事と併行しながら、アニメーション映画、プロモビデオ、ライブパフォーマンス等、さまざまな創作活動を行っております。

そんな私から皆さんに伝えたい事があります。それは今日から「みな仲間である」ということです。クラスメートはもちろん、サークルの先輩、そして先生もです。もし皆さんにとって「教授=教える人、学生=教わる人」という構図が卒業まで変化しなければ、それはとても残念な事です。私は教師を喜ばせる模範的優等生より教師を嫉妬に狂わせるような学生こそ魅力を感じます。教師もまた自身の表現を探求しています。年齢や経験の差こそあっても創作への情熱は皆さんと何ら変わりません。切磋琢磨とは学生同士だけの問題ではないのです。ムサビを「巨大な美術部の部室」と考えてください。ここに生息するのは「新入部員」と「先輩たち」と、そして「多少歳くった先輩たち」なのですから。

入学おめでとう!!

卒業生代表祝辞

写真:小杉幸一

卒業生代表
小杉幸一

株式会社博報堂
2004年視覚伝達デザイン学科卒業