2016年度 武蔵野美術大学卒業式典

日時 2017年3月18日(土)10:00開場 11:00開式
場所 武蔵野美術大学 体育館アリーナ

式次第

  • 開式の辞
  • 校歌斉唱
  • 学位記(卒業・修了証書)授与
  • 卒業・修了制作(論文)優秀賞授与
  • 学長式辞 学長 長澤忠徳
  • 理事長祝辞 理事長 天坊昭彦
  • 教員祝辞 教授 堀尾幸男
  • 校友会会長祝辞 井上搖子
  • 学生パフォーマンス
  • 閉式の辞

会場風景

式典スタッフ

監修 牧野良三(通信教育課程教授)
演出 角岳史
振付/ダンサー 坂口江都子
照明 望月太介(株式会社アート・ステージライティング・グループ)
音響 遠藤廣人(株式会社コーストライン)
舞台施工 桂賢一郎/古川俊一(東宝舞台株式会社)
映像 大田晃/山崎連基(映像学科講師)
映像配信 渡辺真太郎(デザイン情報学科講師)
舞台監督 畑崎広和
ブラスアンサンブル 入江圭亮(Tp.)/伊藤亮(Tp.)/小野健児(Tb.)/伊藤顕治(Tb.)/黛拓郎(Tub.)/長谷川雄基(Perc.)
ダンサー(学生) 青山彩織/石黒言子/大嶋結衣/仲田ゆりえ/松浦愛
人形原型制作 成田輝
覆面デザイン・制作 阿部美里(本学卒業)
装置制作(学生) 浅野明子/安達真琴/今井尚史/乙津幸穂/勝原陽子/菊池風起人/北村彩子/須田みづき/田野倉由佳/長塚信之/長谷川葉平/前田博雅
司会 澤野誠人(学生支援グループキャリアチームリーダー)
協力 白石学(デザイン情報学科教授)/基礎デザイン学科研究室/デザイン情報学科研究室/映像学科研究室/通信教育課程研究室
リーフレットデザイン 平野昌太郎(基礎デザイン学科講師)
印刷 株式会社アトミ
連絡・調整 矢野恵利子/秋山千穂(通信教育課程助手)
美術・デザイン 愛甲佳世(総合美術研究所)

学長式辞

写真:長澤忠徳

武蔵野美術大学学長 長澤忠徳

本日、ここに、造形学部1,017名、大学院修士課程110名、博士学位取得3名、通信教育課程133名、合わせて1,263名の卒業・修了の学生諸君に学位記を授与できますことを、私たち武蔵野美術大学教職員一同は、心から喜び、祝福いたします。この卒業・修了生の中には、海外から武蔵野美術大学に入学され学ばれた76名の留学生の皆さんが含まれています。造形学部卒業生、大学院修了生のみなさん、おめでとうございます。

また、学生諸君の勉学を支え、見守ってこられた保護者のみなさま・ご家族のみなさまの喜びもひとしおかと存じます。おめでとうございます。
我が国の美術大学を代表する伝統あるこの武蔵野美術大学に、ご子弟を学ばせていただきましたご理解とご支援に感謝し、本学を代表して心よりお礼を申し上げます。ありがとうございます。

「教養を有する美術家養成」、「真に人間的自由に達するような美術教育」という本学の教育理念は、帝国美術学校から続く本学造形教育の理念でありますが、その教育は、美術・造形・デザインという専門分野の教育にとどまらず、創造的人間としての「堅い意志」と、世界を受け止め理解する「寛容さ」、そして、柔軟な「わかるチカラ」を育むものであると、私は信じています。

振り返ってみれば、2012年度、本学は、グローバル人材育成を推進する我が国の美術大学として唯一選ばれ、世界に開かれた可能性に満ちた人材育成に挑戦して来ました。みなさんは、来校する訪問教授にも恵まれ、居ながらにして、世界水準の教育を体験されてきたことと思います。また、多くの学生諸君がワークショップなどを通して、国際体験する機会にも恵まれたことと思います。本学は、もはや日本の一私立美術大学であることを超えて、「世界のムサビ」へと歩みを進めているのです。そして、そのチャレンジに挑んだのは、他ならないみなさん自身なのです。

世界は、グローバル化が進んでいます。英語が世界語として重要な言語の位置を占めて来ています。造形言語を扱う私たちの美術・デザインの分野は、もとよりグローバルなものでもありましたが、クリエイティブな表現という「地球人としてのみなさんの振る舞い」は、以前にもまして、世界に影響を与えるものとなって来ています。しかし、一方で、グローバル化一辺倒ではなく、違いがあるからこそ意味をなす、地域固有の文化のアイデンティティを大切にし、尊重することの重要性も再認識されています。

2020年には、東京オリンピック・パラリンピックが開催されますが、それはスポーツだけのイベントではありません。これから、私たちの文化・芸術、教育の分野も、その盛り上がりとともに進んで行きます。

時代のキーワードは「イノベーション」と言われます。時代は移り変わっていきますが、伝統文化と種々の革新を「調和」する姿として実現して来た我が国は、東京オリンピック・パラリンピックを契機に、さらなる様々なイノベーションに挑んでいます。みなさんは、クリエーターでありイノベーターとして、その一翼をしっかり担って飛躍のチャンスをつかんでいただきたいと思います。

学生諸君の人生の学びのひと区切りとして、今、この武蔵野美術大学を旅立つ、輝く諸君の眼差しには、嬉しさと喜びがあふれています。

これから「創造の世界」という大海原に漕ぎ出そうとしているみなさんに、私からの願いを伝えたいと思います。それは、「大海原の、あの遥か彼方に見える水平線の上に立つ」ことを信じ切る「意志」の存在を、もう一度、自覚して欲しいということです。

美術大学に進学することを決めた時も、きっとそうだったと思いますが、本学に入学された時から、すでに「あの遥か彼方に見える水平線の上に立つ」航海は始まっていたのです。そして今、その航海は、さらなる大海原に漕ぎ出す段階にあります。

創造すること、クリエイティブであること、「創造という未知への挑戦」は、矛盾をひと飲みに飲み込んで、理屈を超えて「水平線の上に立つ」ことを信じることに似ていると思います。そんな「意志」に支えられるものだと思うからです。

「意志」という言葉の「意」という漢字は、「音」と「心」からできています。自分にしか聞こえない「心の音」を自分の外に表出すること、あらゆる可能な方法で、自分の「心の音」を自分の中から出すことの修練が、様々な体験を通したみなさんの本学での学びであっただろうと思います。だから、自らの「心の音」に耳を傾け、しっかりとその音を聴いてください。それこそが「表現」の根幹を成すものだからです。その内なる「心の音」こそ、みなさんそれぞれの「個性」なのです。表現者であるみなさんは、自らの「心の音」を聴くことを、これからはもっともっと大切にしてください。

「生きる、をつくる。つくる、を生きる。」という素敵なフレーズがあります。私も大好きなこの言葉は、2009年、本学創立80周年の時に生まれたムサビの合言葉ですが、私は、今あらためて、この合言葉を、巣立って行く諸君に贈ります。本学でのすべての体験は学びであり、「生きる、をつくる。つくる、を生きる。」ことへの準備であっただろうと思うからです。

今日は晴れがましい門出の日です。ご卒業されるみなさん、今日の日の感動を忘れず、若いチカラと自信を持って、胸を張って「生きる、をつくる。つくる、を生きる。」それぞれの人生への一歩を踏み出してください。

最後に、万感の思いを込めて、もう一度、お祝いの言葉を贈ります。おめでとう!

理事長祝辞

写真:天坊昭彦

武蔵野美術大学理事長 天坊昭彦

皆さん、おはようございます。理事長の天坊です。
卒業生のみなさん、卒業おめでとう。
卒業生のご両親はじめ、本日ご列席のご家族の皆さん、おめでとうございます。
入学から卒業まで、いろんなご苦労やご心配もあったかもしれませんが、本日は少しほっと肩の荷が降りた気持ちでおられるのではないでしょうか。卒業生を支えてこられた皆様のご支援に心から敬意を表し、改めてお祝いを申し上げる次第です。

本日武蔵野美術大学を卒業し、社会人として新たな門出を迎えるにあたり、これからの心構えとして覚えておいてもらいたいと思うことを、3点申し上げたいと思います。

まず1点目ですが、昨年イギリスが国民投票でEU離脱を決めた事、アメリカ大統領選挙でトランプ大統領がクリントン候補を破り勝利したことは、いずれも事前の予想をくつがえすものでした。こうした傾向はこれからのヨーロッパで行われるフランスやドイツの国政選挙でも起こるかもしれません。それは大きな声では言い難いが、今まで歩んできた路線が続いていては、自分達の生活は大きく改善できないので、今までと違った道を行ってくれそうな人にそっと自分の票を入れてみようと思っている人が相当多いということだと思います。
例えば国の枠を超えて自由貿易を推進するグローバリゼーションに不安を覚えている人が多かったということかもしれません。然しもっと本質的なことは、ITやスマホの普及によって或いは技術革新策によって、いろんな意味で今までのシステムがそのままではうまく行かなくなって来ているという問題が根底にあるのだと思います。つまりあらゆる分野で大きな改革が必要になって来ています。これは日本にも当てはまることです。

行き詰まった社会に改革のヒントを与える先進性は芸術にあると言われます。改革(イノベーション)には、知恵と創造力が必要です。だからこそ、今のような時代には芸術を学び、美や文化を追及してみることが必要なのではないでしょうか。
ということは、言い換えれば、世界のいろんな分野で、美術を学んだ人材が今必要とされているのだと思います。卒業生の皆さん、あなた方の出番が来ているのです。
企業や社会で求められている人材というのは、個性のある人材です。個性のある人材とは、変人奇人の類いの変わった人という意味ではありません。しっかりした自分の考えを持ち、対話をしながら相手を説得できるコミュニケーション力の高い人材のことです。
あなた方はムサビで4年間、絵画やデザイン等、モノづくりを通して美術を学んできたと思っているかもしれませんが、もう一度思い出してみて下さい。4年間毎日のようにやってきた創作活動とそのプレゼンテーションは、美術に関する能力の向上を狙っているのは確かですが、一方でこの教育の本質は、考える力を鍛え、自分の考えを人に伝え、相手を説得する力、つまりコミュニケーション能力を高める教育でもあったのです。私はムサビに来て初めてこのことに気付いたのですが、こんなにすごい教育を4年間も続けている大学は他にはあまりないでしょう。あなた方は企業や社会が今求めている人材なのです。是非自信を持って下さい。

「教養のある美術家の養成」というのは、本学の理念です。この大学で4年間学んだだけで、教養ある美術家になれる訳ではありません。美術家を志す皆さんにとっては、教養ある美術家になる為の基礎を身につけた所であり、これから一生かけて、自分自身を磨き続ける努力が必要です。
美術家でなく、ビジネスの世界に進む皆さんにとっては、先ずは、各々のビジネスの仕事に係る専門的な知識を修得する必要があります。その上で他の人と違った自分らしい意見をまとめ、考える力を如何なく発揮して下さい。4年間鍛えられた考える力は大きな力になる筈です。

いずれの道に進もうとも、ムサビで学んだことを基礎に、これからあなた方が更に研鑽を積んで、社会で活躍される実績がこれからのムサビの伝統を作っていくことになるのです。ですから、ムサビで学んだことに誇りを持って、あなた方一人ひとりがこれからの良きムサビの伝統作りに貢献できるように努力してくれることを大いに期待しています。

2点目です。
今、「自信と誇りを持て」と言いましたが、あなた方は未だ実社会の経験が殆んどない初心者です。だから今すぐに「自信と誇り」を表に出しすぎると「高慢な人」とか「自惚れてる」と思われて、決して良いことはありません。「自信と誇り」は、自分の心の中で持ち続けて下さい。
大学で勉強して来たと言っても、実際の世の中はもっと複雑で人間の感情やいろんな人の利害が絡み合っていることが多いです。だから先ずは謙虚になって人の話を良く聞いて、その上で良く考えて行動し、又、話を聞いて考え、再び行動するというくらいの謙虚さが必要です。そして経験を積むことが大切です。
こういう経験を積み重ねていくうちに、人間の機微というものが解るようになってきます。そうなると学問も活きてきます。先ずは謙虚になることを忘れないで下さい。

3点目です。
最後になりましたが、卒業生の皆さん、本日あなた方が無事卒業ができるように陰に陽に懸命に支え続けて下さったご両親はじめ、お世話になった方々に改めて、感謝の気持ちを胸に刻み、これからは折に触れて恩に報いる気持ちを尽くすことを忘れないで頂きたいということです。

「心の中で自信と誇りを持ち続けろ!」
「謙虚になれ」
「感謝の気持ちを忘れるな」
この3つを贈る言葉として、私のお祝いの挨拶を終わります。

教員祝辞

写真:堀尾幸男

武蔵野美術大学教授 堀尾幸男

『ガー!』『ガー!』『ガー!』(ポーズ)

学生諸君にこの奇声を贈りたい。この奇声は、私が考えたのではない。野田秀樹という劇作家・演出家が『足跡姫』の公演中で、亡き歌舞伎役者・中村勘三郎の湧きあがる彼の創作意欲の表現をしたもの。それを私がパクリ、換骨脱胎、「勘三郎の芸術精神」を発した奇声を、君達に、伝授することを思いついたのです。
この四年間、我々は、君達に何を授けたか、何を教えたのか、省みると、心もとない。何も教えられなかったようでもあるし、君達も、学び足りないと思っているだろう。いや、教えもしなかったし、教えられもしなかったのかもしれない。この四年間ただ、武蔵美生であった。
だから今、諸君に一つだけ教えよう。
『ガー!』と叫びなさい。これは、創造造形のよろこびの発露です。
セイノ『ガー!』、もっとセイノ『ガー!』。オーマイ『ガー!』
声が出ない。だめだ、こりゃあ、教えられもしないし、教えられることも出来ない。
.
(そんなことはないというふうに手を振って)

==改まって==
諸君、この奇声を曠野に両足で、スックと立ち、『ガー!』と、ゴジラのように、悲しかったり苦しかったり、楽しかったりしたとき、社会に無視されたとき、あるいは恋にはじかれたとき、発するのです。
いつも、在野にいるゴジラに戻るのです。勘三郎がゴジラになってしまったけど、創作意欲である『ガー!』こそがエネルギーの元なのです。

『吠えるのだ!』

==改まって==
五十年前、私も武蔵美の『在野』を先輩から言い聞かされました。どんな環境、どんな荒廃時も、在野にスックと立ち、創造の雄叫びをあげなさいと。この青春の、創造を思い出しなさいと。
考えてみれば、これこそが父母がくれた素晴らしい時間だったのです。もう二度とありません。
君達は、これから社会に出る。
嵐よ、吹け。『ガー!』『ガーォ!』在野にあって、吠えろ。嵐よ、吹け。それでも私は生き続けてやるぞ。と。
嵐が吹いても、創造の精神。『在野』の精神。これこそが諸君が「四年間で」覚えた武蔵美イズムです。

(もう一度、声なしで『ガー!』のポーズ)

そして、祝典・卒業式にご来場の皆様に、卒業のお嬉こびを、申し上げます。

校友会会長祝辞

写真:井上搖子

武蔵野美術大学校友会会長 井上搖子

校友会会長の井上と申します。
本日はご卒業おめでとうございます。ご父兄その他関係する皆様もお喜びのこととお祝い申し上げます。私たち校友会は卒業生の皆様をお仲間としてお迎えできることを大変嬉しく思っています。

卒業生の皆様のムサビでの最後の年がどんな一年であったか振り返ってみると、4月に起きた熊本の震災で始まったというどなたの記憶にも忘れられない年となりました。この場にも被災された方もいらっしゃることとお見舞い申し上げます。まだ東日本大震災の記憶が生々しく、復興も半ばという時に、私自身は自然の脅威に恐れおののく思いでした。しかし、だからこそ被災地でも周囲の地域でも、今すべきことに向かう人々の動きが早いうちから見受けられたように思います。

校友会の例では、熊本に在住する校友の方達は8月に展覧会を計画していました。震災でそれを断念しなければならないかと思われたのですが、ご本人たちが、いや、今こそ展覧会をやろうと立ち上がったのです。すると近県の校友たちが協力に駆け寄り、それが更に広い地域に広がって多くの校友が作品を寄せてチャリティー展も開催するという風に、一つの輪がまるで目に見えるかのように展覧会が行われました。芸術は人の心に寄り添うことができるということを私は再認識いたしました。このようなでき事が私の知らないところでもたくさんあったと思います。そして同じように思われた方も多くいらっしゃったと思います。

武蔵美で学んだ多くのことを糧として、皆さんは明日からの新しいステージでそれぞれの花を咲かせる未来があることでしょう。誰しも時には疑問を持ったり立ち止まったりすることもあるでしょう。でも芸術は人の心に寄り添えるものということをぜひ忘れないで思い出してください。どんな時にもきっと良い方向へ繋がるきっかけをもたらしてくれると思うからです。

校友会はこれから一生のつきあいになる集まりです。卒業したばかリの方の中にも一緒に活動される方もいますが、それぞれの道で技を磨き心身を鍛え、いつか校友会に自然と導かれる方もいらっしゃいます。出会いはいつかわかりませんが、楽しみにしています。本日の私から皆様への祝辞とさせていただきます。