藤村念子

空間演出デザイン学科4年アールト大学美術デザイン大学(Taik)2010年8月~2011年7月派遣

写真:ヘルシンキ市内で喫煙者の最も多い中央駅にて夜光塗料を塗装した煙草のフィルターを用いた展示の様子(本人)

ヘルシンキ市内で喫煙者の最も多い中央駅にて夜光塗料を塗装した煙草のフィルターを用いた展示の様子(本人)

こちらに来て4ヶ月が経とうとしています。武蔵野美術大学ではインテリア・室内空間を学んでいた私でしたが、こちらでは環境アート学科に所属しています。というのも、極北に位置するフィンランドはご存知の通り、四季が明瞭に見られ一年を通して過ごしやすい日本とはかけ離れて、春夏は日が沈まず、秋冬は打って変わって陽が昇らないという特殊な環境の上に成り立っています。今もなお不動のデザインが生まれた訳、世界一の国家として誇られる訳、それはこの尽きることのない森と湖で形成された環境とそこに暮らす人々との織り成す関係にあると考えた背景があります。

Taikでは当初、デザインとアートはほとんど別物と考えられている節があった為、併せて履修するはずだったデザインの授業が取れなかったり、工房が利用できなかったりと、困惑することもしばしばでしたが、環境アート学科では学生のアイデアに対する理解と尊重が大変しっかりとなされています。この学科の授業は街中や郊外でプロジェクトを行うワークショップ形式のものがほとんどですが、驚くことにそれぞれのプロジェクトに正式なスポンサー、それもヘルシンキ市やフィンランドを代表するようなメーカー又はブランドが非常に快く、バックアップしてくれる体制が整っているのです。実際、現在進行中の2012 Design Capital Helsinkiに向けた三つのプロジェクトのうち、一つはフィンランド中部に位置するセイナヨキ市から、もう二つはヘルシンキ市から依頼されているもので、学生の意見をとても積極的に取り入れようとしている姿勢が伺えます。

写真はIntervention Workshopという、ヘルシンキ市内を調査・探求・発見し、例えば人と都市との間、人と人との間、人と自然との間に介入するアートを考察する授業で私が制作したものです。EU諸国の各都市の中でヘルシンキはとても清潔な街ですが、喫煙者が非常に多い為か煙草のポイ捨てが至る所で見られたので、光を放つフィルターをばら撒くことで、街行く人々にこの問題と向き合うきっかけになれば、と考えついたものです。この問題はヘルシンキ市全体でも頭を抱えているものだった為、市内の各関連機関にも直接コンタクトを取ってプロジェクト内容をお知らせしたところ、とある病院の医師が大変興味を持ってくれ、この方が独自に地元テレビ局にプロジェクトの取材を依頼し、ついにはテレビ局から番組出演とインタビューのオファーまで頂きました。日本ではなかなか考えられないようなことです。

一人の学生の意見に対して最初から評価するという立ち位置からではなく、同じ目線で考察し最大限に伸ばすために確立された教育体制が、フィンランド国民の心を豊かにしている大きな要素となっていることを、身を以て感じています。留学期間中はきっと自分で想像しているよりもずっと、五感を全開にして沢山の事を吸収して感じ取っているものと思いますが、どれにおいても言えることは、この環境に身を置いて初めて得られる経験だということです。それと同時に、環境が人に与える影響というのは深層心理そのものまでに及ぶものと、劇的に変わりゆく気候の中で日々感じ取っています。人生において又とない瞬間の集積を過ごさせて頂いていることに、心より感謝しています。

正垣琢磨

工芸工業デザイン学科4年ミラノ工科大学デザイン学部2010年8月~2011年7月派遣

写真:正垣琢磨 とある日のグループワークディスカッション(インテリアデザイン)

とある日のグループワークディスカッション(インテリアデザイン)

漠然としたイタリアへのイメージと不安をもって渡伊してから早3ヶ月が経ち、ようやく生活に慣れてきたところです。私は2年生まで油絵学科で学びました。大学に入った頃からイタリアの絵画に関心がありましたが、デザイン科に転科してからは、さらにイタリアのデザインにも関心が広がりました。イタリアの華やかなライフスタイルを演出するインテリアデザインはどのようにして創造されるのか。自分の目で確認したくて留学しました。そこには確かに、豊かなライフスタイルがあり、人とデザインの距離が近いと感じました。美への認識が高い人や、今尚残っているルネッサンス期の建築に囲まれて勉強できることに日々感動しています。

ミラノ工科大では学科、学年をまたいで自由に課題を選択することが出来ます。私の場合は2年生のインダストリアルデザインの授業とインテリアデザインの授業を選択しました。それに加え、ワークショップも選択しました。ムサビと異なるところは、全ての課題が同時進行することと、全ての課題がグループワークということです。毎週教授のチェックがありそれまでにグループで集まりディスカッションをし、プレゼンボードを作ります。教授から求められるものもムサビとは違います。工科大ではざっくりとした課題が与えられ、自分たちで具体的な課題を発見していかなくてはいけません。そしてリサーチからコンセプトを作るまでの時間が授業の大半を費やします。ムサビにいた頃は、具体的な制限のある課題が与えられ、リサーチからコンセプトを考えるための時間が少なく、それよりも最終的な形の完成度が求められていました。もちろんとても大切なことではありますが、物があふれているこの時代に、物の形を考えるよりも根本的なところの問題定義や、コンセプトを考えることに時間を割くべきだと私は考えていたので、工科大学の方針と私の考え方は合っていました。

留学するとなると、言葉の壁があります。工科大ではグループワークであるために、コミュニケーション能力が必要です。私の場合はイタリア語も英語も達者ではないのでディスカッションの時は大変苦労しています。これはワークショップをしていた時の話ですが、メンバーに留学生が多かったので、共通言語がイタリア語ではなく英語で行われました。私は、みんなの話している内容を遅れて理解するため、みんなに呆れられ一日中相手にされなかったことがあります。私はその事が本当に悔しくて、どうすれば自分の考えが伝えられるかを考えて、徹夜でスケッチを大量に描き、ディスカッションが始まる前にみんなに見せました。工科大の人たちはスケッチが描けないので、みんなは私に関心を向けるようになり、私に意見を求めるようになりました。自分の意見が伝わり、アイデアを認めてもらえることの喜びは本当に大きなものでした。

留学する前は「何がしたいか」でしたが今は「何が出来るか」が問われます。常にスキルを求められるので、常に明確な目標と準備が必要になります。だからプレッシャーやストレスも大きいですが、ムサビにいたら考えられないような苦労を体験できています。学生の間にこのように貴重な体験をさせていただいている事に心から感謝しています。

倉富二達広

油絵学科4年プラット・インスティテュート2010年8月~2011年7月派遣

写真:倉富二達広 毎週末は友人と遊びに行きます

毎週末は友人と遊びに行きます

Pratt Instituteで学び始めて3ヶ月が経ちました。毎日が刺激的で、とても充実した時間を過ごしています。先生に恵まれ、友だちにも恵まれてこれ以上無いほど楽しんでいます。

僕はムサビでは油絵学科に所属していましたが、こちらではグラフィックデザインを勉強しています。理由としては、Pratt Instituteがデザインの分野でアメリカ有数の名門校であること、そして3年生の時からムサビでデザイン情報学科の授業も受けさせてもらい僕自身の興味が移ったことです。当初は慣れない英語での授業に加え、デザインに関する知識やスキル不足でとても苦労し、他の学生に追いつくために眠れない日々が続きました。今でもこちらで3?4年間学んできた学生たちとは非常に差があると感じていますが、ある程度ついて行けるようにはなったという感触です。

ムサビとの差として、Pratt Instituteではとてもコンセプトを重要視します。ムサビは自主性を重んじ、創造力や独創性を育てる傾向があると僕は感じていましたが、こちらではいかに作品にオリジナリティーがあっても、理由がなければ良い評価はされません。とてもプロフェッショナルな観点からシビアに学生を評価します。例えばパッケージデザインのクラスでは、いかにグラフィックや形体が美しくても、設定されたクライアントの意向に沿っていなければ先生は何も言ってくれません。どれだけ知恵をしぼれるかに係っています。なるほど!と他の学生含め皆が論理的に納得するような作品をつくらなければなりません。もちろんとても難しいことですが、厳しいことで学生の競争心を煽り、結果学生全体が高いモチベーションの中で勉強することが出来ていると思います。心地よいプレッシャーの中でとても楽しんで制作しています。

NYでの生活は刺激に溢れています。少し歩くだけで世界で活躍するアーティストやデザイナーの作品を見る事が出来ます。また至る所で有名人がプレゼンやパーティーをしているので、どれだけ課題が忙しくても外に出る時間はとる様にしています。作品制作も大事ですが、出会いや経験も僕の作品、そして人生に大きく影響を与えてくれると思います。

こうして充実した日々が送れるのも全てムサビからのサポートのおかげだと思っています。Pratt Instituteの正規の学生や他の交換留学生に比べ、はるかに良い条件で、学びたいことを自由に学べています。交換留学というチャンスをもらえたもとにとても感謝しています。

飯沼洋子

油絵学科4年パリ国立高等美術学校2010年8月~2011年7月派遣

写真:飯沼洋子 モザイクアトリエの制作風景

モザイクアトリエの制作風景(筆者中央)

ボザールの授業が始まって2ヶ月、日本とフランスでのアートの考え方の差異やシステムの違いなどを肌で感じています。また自分が日本にいる間に想像していたヨーロッパ・他国の概念を、正規のフランス人学生や留学生同士のコミュニケーションを通して捉え直しています。日本についても改めて考え直し、これからのことを考えていくきっかけがここには多くあります。

まずボザールでは所属アトリエを決めるために1ヶ月猶予が与えられます。ポートフォリオを教授にプレゼンし、受け入れてもらえるかどうかが決まります。ここで私が実感したのは、語学の問題は当然あるわけですが、それとはまた別に「作品のプレゼン力」というものが存在すると思いました。こちらの学生は自分の作品をプレゼンすることに非常に長けていると思います。また自分のポートフォリオを教授にも学生にも見せたときによく言われたのは、「このアーティストを見たらいいよ」といったアドバイスでした。他人の作品を見たときの反応も日本とはまた違うと思います。他人の作品にアドバイスをすることに、より積極的であると感じました。批判したり、ほめ合う、といったことではないです。学ぶことは多いです。

他に気づいたことですが、こちらと日本とのアートの分類分けも違う様に思います。例えばムサビだと絵画科の学生は何をやってもいいと言ったマルチメディアですが、こちらは違います。絵画のアトリエでは絵しか描いている学生はいません。ボザール内においては彫刻やインスタレーションのアトリエがアートコンテンポランと考えていいでしょう。私の所属アトリエは絵画ですので、ボザールの中でも非常に保守的な部分のあるアトリエだと実感しています。しかしこの保守性もフランス人の気質かとも思います。ゆえに過去に一度影響を受けた日本文化に対する興味は非常に大きいです。

また交換留学生用のフランス語の授業で、各学生が自国のアートコンテンポランの現状を発表するという機会があります。この発表で色んな国のアーティストを知ることが出来るし、発表する立場になると「日本のアートって何なんだろう」と考え直すきっかけになりました。日本は本当に島国で、目を向けようと努力しないと海外のことは見ることが出来ない状況だと思いました。それが良くも悪くも作用しているように思います。

制作に関してですがボザールのシステムがムサビとは違い、自分の制作ペースがつかめないのでしばらく苦労していました。私が現在行っている制作はMosaique(モザイクに出会えたことは本当に良かった)、Taille1(木とモザイクの併用)、所属アトリエ(Philippe Cognee)での制作、川俣正教授とパリ国際都市日本館(私の滞在している寮)とのコンペティションへの参加です。同時に4つの制作をこなすことは、正直かなり不可能なように感じられます。今は地道にやっている現状です。ですので、自分の制作でやりたいことがはっきり見えている人は、留学後の制作も無駄なくスムーズに行き、より多くを学べるのではないかと思います。

パリは文化と学生に本当に寛容な国です。展覧会やイベントの多さ、人々の文化への関心は比べ物になりません。この点においては素晴らしい国だと思います。パリに1年いるということは、違いを実感?発見するということでもあるけれど、同時にいわゆる「海外」における流れの中に身を投じることが出来る、もしくは自分を肥やすことが出来るチャンスであると考えています。

山崎祐希

工芸工業デザイン学科4年ベルリン芸術大学(UdK)2010年8月~2011年3月派遣

写真:山崎祐希 同じスタジオの友達と(筆者左)

同じスタジオの友達と(筆者左)

私はベルリン芸術大学のFine Artsを専攻しHeld教授のクラスで制作を行っています。こちらに来て授業が始まり2ヶ月が経ちました。日本にいる頃よりも時間がゆっくり流れている事に驚きます。ムサビにいた時は、1ヶ月か6週間で1課題を終わらせていたのに対し、ベルリンでは1学期間の間に自分が設定したテーマで制作を行っていきます。

私のスタジオは6人でシェアしていますが、一人一人違うことをやっているので全員が顔を合わせることはありません。また、大学には、金工、木工、テキスタイル、陶器、石膏、写真、リトグラフ、シルクスクリーンなどの工房があり、自分の制作に沿った技術を学ぶことができます。ただ「自分はこういう作品を作りたい。」と、作りたいものがはっきりしていないと追い返されます。週に一度、教授を交えてのクラスミーティングがあります。数名が、今自分が進めているプロジェクトをプレゼンし、意見交換をします。それらは全てドイツ語です。

新しい土地で、新しい人と出会い、自分は成長していっているのだと考えると、毎日がとても充実しています。日本にいる時の10倍くらい頭を働かせています。貴重な経験をすることができ、色々な方にとても感謝しています。半年間はあっという間で、もう帰国のことを考えなければなりません。ドイツのことも大学もぺろっと舐めた程度で帰国することになりそうです。残りの留学生活も、まずは「楽しむ」。これを軸にして生活していきたいと思います。