川野千鶴Kawano Chizuru

作品写真:elbow
作品写真:elbow

エルボelbow

インスタレーション、映像|紙、アクリル絵具、ジェッソ、釘、木材、プロジェクターInstallation art, video|Paper, acrylic paint, gesso, nail, wood, projectorH1820 × W2730 × D1800mm ×3点 10min ×3点

東京の月島にある長屋を部分的に撮影し、編集で組み合わせ、非現実的な一つの風景を作り上げた。長屋ならではの剥き出しの配管や、色彩豊かなトタンに着目して、それらをより強調させるためのレリーフを作り、映像が与える情報と紙の輪郭線によって、さらに「もの」の造形をはっきりさせた。プロジェクターから放つ光が支持体の紙に馴染んでいく姿は幻想的で、4年間映像というものに触れてきたが、まだまだ未知だと感じた。

川野千鶴

川野の作品を還元的に辿れば、二つの優れた地点が覗える。一つめは、実際の都市を一つの作品として観て、アッと驚いて、幸せでいる地点である。この時、川野が見詰めているのは、生きられた家々の痕跡としての線、水道や電気、ガスの配管の線、各種メーターやエアコンの室外機、雨樋などに別々の方向から集まってくる線、である。第2の地点は、その気まぐれで、偶然、例外としかみえない線を、秩序と必然と法則として表さなければならないという強い意志である。そこで、川野が採った方法は、それらの線を薄い紙による層状のレリーフとして制作し、それをスクリーンとすることであった。そこにぶつけられた映像の黒は、この上もなくマットで、そこに光の様に現れた配管の線は「デザイン」された形の輪郭線のように、思わず、美しい、と言ってしまう。そして、次に長い時間の中で生きられた長屋の線がそこに加わり、そしてすべてが消えて、道だけが現在として残る。

映像学科教授 板屋緑

後藤千尋Goto Chihiro

作品写真:乾杯
作品写真:乾杯

乾杯KANPAI

映像|手描きアニメーション、デジタル作画Video|Animation, digital drawing17min 37sec

「あなたへ祝杯を」
送ることが役目の親子と、送られる1人の女性の話しです。
霊園を経営する市村家の人は霊感があり、仕事として何人もの霊を送っています。1ヶ月前に交通事故で亡くなった高宮ゆきこ(27)は、成仏出来ないまま霊園に留まっていました。霊園経営者の市村さえ(42)は彼女を心配し、手を差し伸べようとします。後悔を拭い去るため、彼女はさえの運転する霊柩自転車に乗って旦那の下へと向かいます。この世界では見送りの際は乾杯を行います。無事に成仏した霊へ祝杯を上げるという意味が込められていますが、周囲の人々は霊が見えないため、この一連の行為を「不気味な儀式」と認識しています。霊園は住宅地のど真ん中にあり、近隣住民は霊園に見えない何かがいるように感じ、敬遠します。加えて市村家も周囲から避けられています。
主人公の市村みゆき(16)は、家の仕事は決して悪いことではないと理解しつつ、周囲(作品内ではクラスメイト)との関係が上手くいかないのは家のせいであると日々に不満があり、母親とぶつかることもしばしありました。墓地、葬式、霊柩車が市街地から追いやられる傾向にある現代社会と私たちの日々の生活の後悔をテーマとした作品です。

後藤千尋

アニメーションの語源には「命」という意味がある。線で描かれたキャラクターたちが動画空間で息づいている。記号表現に依存する事なく緻密な演出で乾いた現代人の心へ力強く語りかける骨太の人間ドラマを紡ぎ上げた。あの日から「死者との共生」は未来に向かって生きる僕たちの新たなリアリティーとなった。世の常識では故人を送る杯は「献杯」だろうが、この映画を見終わった時、誰もが『乾杯』という題名に深い共感を覚えるに違いない。

映像学科教授 黒坂圭太

西堀真澄Nishibori Masumi

作品写真:マスミックハウス
作品写真:マスミックハウス
作品写真:マスミックハウス
作品写真:マスミックハウス

マスミックハウスmasumicchouse

インスタレーション|木、トタン、家具、家電、モニター、他Installation art|Wood, corrugated galvanised iron, furniture, household electric appliances, monitor, otherH2800 × W2800 × D2800mm

この作品はエンターテイメントに溢れ、人々に楽しんでもらい、自然と笑顔になれるような作品にしたかった。これはもう私の今までの集大成、そしてアトラクションに近いものがここにある。

西堀真澄

映像制作で学んだこと、経験したことのすべてを投影したインスタレーション作品。シナリオ制作で学んだ物語構成、撮影で学んだカメラワーク、物理現象に支配されないCG制作など、様々な授業で習得し思考したあらゆることをからくりと造形に代えて展開した。造形を基にすべての映像ジャンルを横断する映像学科だからこそ実現した作品である。
一見、バラック建ての小さな小屋であるが、実は映像展示のための空間であったことを記しておく。

映像学科教授 篠原規行

兵頭実憂Hyodo Miyu

作品写真:DEAD END
作品写真:DEAD END

DEAD END

写真|インクジェットプリントPhoto|Ink jet printH1030 × W1456mm H544 × W841mm ×6点 H420 × W594mm ×4点 H210 × W297mm ×11点

明るい行き止まり

兵頭実憂

東京の中心部と周縁部の狭間に位置する中途半端な郊外の街への愛着と憎悪が、作者独自の繊細かつ大胆なフレーミングによって、的確に表現されている。奇をてらうことなく、穏やかに収められた街並みは、その平凡な明るさの中にDEAD ENDとしての危うさや儚さを内包していることを我々に教えてくれる。
主観と客観が溶融するかのようなドローン的眼差しの果てにあるものは、我々自身の姿であり、今という時代の風景である。

映像学科教授 小林のりお

松本千晶Matsumoto Chiaki

作品写真:傀儡
作品写真:傀儡

傀儡kairai

映像Video76min 50sec

恋人の転落死から12年、記者となった藤真は「事故死で処理された未解決事件」として、恋人の事故を記事にするよう上司から命じられる。
反論も空しく現場へ飛ばされた藤真であったが、過去に容疑者として浮上していた男と遺族たちが共に暮らしている光景を目にする。男に従順な遺族たち。その姿を疑いながらも、藤真は取材を始めるのであった。
学生映画を越える規模とキャストで描く混沌のミステリー映画。

松本千晶

在学中多くの作品に精力的に関わり、長崎で高校生監督の現場を主導、地元の信頼と人脈を得て自らの卒制に繋ぐ。卓越した制作プロデュース力、配役、ロケハン、照明撮影、人物演出…あらゆる点で妥協無く信念を貫き、土地や役者の潜在力をダイナミックに引き出して、学生の域を超える密度とスケール、独自の視点とスタイルを持った人間ドラマを構築。
恋人の謎の死から12年、取材で帰郷した記者が不可解な力に支配されていく。

映像学科教授 小口詩子

吉田春也Yoshida Shunya

作品写真:Look and Find
作品写真:Look and Find

Look and Find

インスタレーション、映像|3DCGInstallation art, videoH1000 × W1800 × D30mm

全てを自由に構築する事ができる3DCGを用いて、より自由に、より楽しめる映像の制作を試みた。鑑賞者に見るポイントを委ねるため、常に街全体を提示し続けている。この作品はマルチカメラの手法を応用し、キュビズム的な映像制作を試みる第一歩としている。CGの自由度を最大限に活かし、全ての時間と出来事を共存させる映像を今後も追求していくこととする。椅子に座っているだけでは何も見えてはこない。

吉田春也

映像という形式は映像に内在する時間の全体を示すことはできない。一方、絵画は常に全体が示されている。『Look and Find』は、映像の制約の中に絵画的性質を追い求めた実験作品である。さらに作者が目指したことは、様々な距離をもって鑑賞できる絵画のような映像の模索である。
それは進歩する高解像度モニターに対応する映像表現についての彼独自の解答であり、映像の高精細化に見出した可能性は、映像作品の新たな鑑賞法に及んでいる。

映像学科教授 篠原規行